パ・リーグが着手する海外進出 台湾における日本プロ野球の中継事情
台湾で注目度が高まっている日本プロ野球
日本の隣国台湾では、これまでも断続的に、日本プロ野球のテレビ放送が行われてきた。特に2002年、台北でダイエー(現・ソフトバンク)とオリックスの公式戦が行われたことを端緒として、日本プロ野球への注目度は高まった。現在は日本ハムに所属する陽岱鋼外野手の人気の高まりもあり、その傾向はより強くなってきている。
そして昨年から、パ・リーグの放送がFOXスポーツ台湾の手で開始され、今年は日本ハムの試合のほとんどが放送された。
台湾の地でパ・リーグの放送が行われることになった経緯を、FOXスポーツ台湾の張致平氏と劉彩樺氏に聞いた。
――なぜ、パ・リーグのコンテンツ放映権を獲得されたのですか?
張致平(以下・張)「我々は番組で、台湾の人々や、もっと言えば世界中にテニスや野球、バスケットボールなどを広めていく義務を負っています。それは我々の誇りです。陽岱鋼についての放映権獲得の機会を得た際に、我々はそれを、日本でとても上手い選手がプレーしていることを人々に伝える、とても良い機会だと感じました。我々が日本プロ野球を放映する最初の目的はそこにあります。
また、MLBやCPBL(台湾プロ野球)と異なり、NPBはより繊細で優雅です。台湾人は野球を含め、日本の文化が好きでもあります。かつて台湾の3大民放局が、日本プロ野球を放映してから10年ほど経ちましたが、(放送会社の)皆が挑戦しようとしてきたのは、台湾人が野球と日本の文化が好きだと知っていたからです。
日本の文化と野球とを結びつけて考えると、日本プロ野球は機会さえあれば格好の題材となります。そのため放映権は是が非でも欲しいものでした。
もちろん、キーパーソンは陽岱鋼です。我々は彼に焦点を当てます。いかに彼が尊敬できる台湾人であるかを伝えようと考えています。彼に関する番組を毎日流せます。皆がよりハッピーになるでしょう。というわけで、放映権はとても合理的な結果だと考えています」
劉彩樺(以下・劉)「放送会社のいくつかが日本プロ野球を放送しようとしてきましたが、放映時間が限られており、どの会社も日本プロ野球を広めようとマーケティングしてきませんでした。また今回は陽岱鋼が野手であり、先発投手のようにローテーションの中にいるわけではないことも大きな要因ですが、これまでと違い我々は、異なった手法を取ろうと考えています。日本プロ野球のマーケティングと試合の生中継、感動的な場面の放送をパッケージ化します。視聴者には試合だけでなく、我々の普及振興そのものも楽しんでもらえるでしょう」
――日本ハムやパ・リーグの人々の第一印象はどのようなものでしたか?
張「とても紳士的で親切ですよ。伝統的な日本人とは違いますね(笑)。オープンで頭が良く、行動が早いです。きわめて順調にやりとりできます。日本語から英語、そして北京語と訳す必要がありませんから、話しやすいです(編注:お互いのコミュニケーションは、すべて英語で行われている)。
ビジネスとしてだけでなく、良き友人となれますね。これは伝統的なものではなく、新しい形なのだと思います。今回彼らとの交渉がうまくいっている理由は、そこにあるのでしょう」
劉「我々(FOXとパ・リーグ)は別の会社ですが、共通した考え方を持っています。だから、そのためのやりとりや共通のゴールを設けることが簡単だったのだと思います。我々は今だけということでなく、長期的な視点に立っています」