オリックス大補強の舞台裏 改革を託された男の哲学(下)

昨季は6年ぶりAクラスに観客動員もパ最高の伸び率、今季さらなる飛躍へ

 イチローらを擁して日本一に輝いたのは遡ること19年前の1996年シーズンだった。故・仰木彬監督が率いた時代を最後にオリックスはリーグ優勝からも遠ざかっている。まずもう1度、パ・リーグの頂点を極めること。それができなければ、3連覇も夢のまた夢だ。

 果たして今季、オリックスはその第一歩を刻めるのか。

 ここに不思議なデータがある。1998年からプロ野球の世界で生きてきた加藤氏はこれまでBクラスを経験したのは楽天1年目だった12年シーズンの4位(67勝67敗)のみで、その他はすべてAクラスで終えている。ダイエー、楽天、オリックスに所属した計10年で2位が4度、優勝も4度経験。チームを勝たせるような目に見えない力でもあるのだろうか。

 加藤氏は苦笑いで否定しながらも、ただ、と付け加えた。

「何とかしようっていう気持ちはいつも強いですよね。昔、ナイキでマネージャーという肩書をもらった時に、マネージャーって何なのか調べたんですよ。そうしたら、マネージ(manage)するって『何とかする』という意味だった。整合性を高めたり、分裂しそうな組織を集約したり、うまく合理化していったり。だから、僕は自分には合っているのかなと感じました。

 それと、僕の中では全員がハッピーじゃなきゃダメだていう原点があるんですよね。誰か1人でも不平不満があるとやっぱりうまく回らない。ナイキの時もホークスの時もそうでした。組織全体に自信がない時というのは、評価する人がいないんです。直接起こったアクションに対して、よくがんばったなと褒めるんじゃなく、どこか他人行儀に、お前でもできるのか、プロだから当たり前だろ、みたいな反応をしてしまう。そういうチームは自信を持てなくなる。僕がプロ野球の球団に入ったから勝ったというのはないと思うんですよ。ただ、空気とか雰囲気が変わればいいなというのはありますね」

 昨季、6年ぶりにAクラス入りし、観客動員も前年比18.4%増とパ・リーグで最高の伸び率を記録。そのオリックス躍進の裏で入団1年目の加藤氏はスカウト網を整備し、オフには可能な限り戦力を整えてきた。あとは優勝を信じて森脇監督へとバトンを託すのみ。そして自身は達成感に浸る間もなく、次なる改革へと動き出していくことだろう。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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