田中将大の現状は「ギャンブル」か スプリットの名手は早期手術のススメ?
「タナカにはそんなことを強いられてほしくはない」「間違いなくギャンブルだ」
ダーリング氏の場合はキャリア中盤からスプリットを多く用いるようになったとのことで、その結果、球速の低下を招いたという。ダーリング氏は記事の中で当時を「あの時は、その日のことしか考えなかったんだ」と振り返っている。結果的に4度の手術に至った同氏だが、いずれも軟骨摘出や骨棘障害という軽度のもので、オフの間に完治したという。
ただ、まだMRI検査などの精密検査が確立されていなかった92年に医師からトミー・ジョン手術を勧められたこともあったようだ。「ノーサンキュー」と拒否したダーリング氏はこの年、15勝と活躍したが、翌年から急激に衰えを見せたという。
「自分はこう考えていた。自分にはそこまで弾丸の数が残されていないので、このまま投げ続けようと。アスレチックスのトレーナーを信頼して、痛みをコントロールしてくれた。自分も打者をいかに欺くか理解していた」
32歳だった時の分岐点をこう振り返りながら、ダーリング氏は「タナカにはそんなことを強いられてほしくはない。ニューヨークのすべての人が最高の彼を見たいと願っている。彼は偉大な才能の持ち主なので、上手く進むことを望む」と言及。トミー・ジョン手術による完治ではなく、保存療法を選択したヤンキースの方針を尊重しながらも、「これは間違いなくギャンブルだ。彼にとっては金銭的なギャンブルではないけど、それでもまだギャンブルではあるし、彼は表舞台で投げたいから、そう選択したんだと思う。彼はただ、過去の多くの投手達と同じことをしているだけさ」と、一定のリスクが存在することも認めている。
記事ではこのような発言を受けて、トミー・ジョン手術が唯一の解決策かもしれないことを、同氏は分かっているのだと指摘。靭帯の傷は自然治癒しないとされており、靭帯損傷の選手は近年、トミー・ジョン手術による完治を選択するケースが増えている。現在54歳のダーリング氏はスプリット多投の後遺症に苛まれているといい、右肘の激痛に苦しむあまりに、ゴルフは左利きに転向したという。
「今振り返ると、自分は静かに消え去るように、燃え尽きたかったんだと思う。すべてのことには代償が伴うんだ」
かつての自分と同様に、スプリットを武器に摩天楼を席巻している田中の活躍をダーリング氏は心から祈っていた。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count