黒田博樹の穴は埋まるのか ヤンキースに重くのしかかる「199回」の補填

抜群の安定感を誇った黒田が移籍、その穴を埋めるのは困難?

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ヤンキースの今季開幕先発ローテ候補と退団選手の比較

 昨季膝を手術し、8試合の登板に留まったサバシアが年間通して健康を維持できるかが鍵を握る。減量を図った2013年辺りから球威の衰えが顕著になってきた左腕は今年で35歳。07年から13年連続年間200回をクリアした左腕は30試合に先発する目標を掲げているが、エースの働きを期待するのは酷というのがスカウトの見解のようだ。

 サバシアと左右の両輪となる田中も右肘部分断裂という爆弾を抱えたまま、2年目のシーズンを迎える。昨年春先のような快刀乱麻のピッチングとまではいかなくとも、首脳陣はサバシア同様に30試合程度の登板を見込んでいる。

 あとは昨季終盤に好投を見せて5勝を挙げた26歳のピネダと、潜在能力を高く買われてマーリンズから加入した24歳の右腕エオバルディの大化けを期待せざるを得ない状況。エオバルディは昨季マーリンズで199回3分の2を投げて、6勝14敗、防御率4.37と大きく負け越し。質の高い内容を示した黒田の「199回」の代役がスムーズに進むとは予想しづらい。

 キャッシュマンGMは「選手が年間通して健康を保てれば、いいチームになる」と前向きだが、ピネダ、エオバルディともにはっきりいって未知数。成長を期待できる反面、実績の少ない若手投手はハイリスクが伴う。投手陣に故障が相次いだ昨季の例があるだけに、ギャンブルが失敗に終わる可能性の方が高いとみるのが自然だ。オフに複数の先発投手とマイナー契約獲得したが、彼らがシーズン途中に昇格する場面が多く見られたとしても驚きはない。

 その意味でも、過去2年間でロビンソン・カノ(昨季前にマリナーズへFA移籍)、黒田博樹というけがに強い年間通して働ける「安定感」のある投打の中心選手を失ったのは大きい。数字に表れない部分での貢献度は大きかっただけに、彼らのような選手の穴を埋めるのは簡単なことではない。「ポスト・ジーター」時代の元年は3年連続レギュラーシーズン敗退という屈辱から暗黒時代の到来へとつながるのか。それとも、新たな黄金時代の幕開けとなるのか。静かなオフを過ごした名門球団の真価が問われるシーズン。キャンプではまず、先発陣に熱い視線が注がれることになる。

【了】

伊武弘多●文 text by Kota Ibu

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