データ活用で浮上目指す楽天 将来の“フロント候補”を育成?
1位に選ばれたのは……、「実際のビジネスにおいて十分通用する」
1位に選ばれたのは、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科修士1年、金子修也さんの「東北楽天ゴールデンイーグルス ファーム試合における観客動員数の予測モデルの開発」。選手が身近に感じられるファームの試合が好きだという金子さんは、「マーケティングの予算は限られているようだが、ファームの試合も1つのスポーツビジネスの場」と考え、動員増にヒントをもたらす予測式づくりに取り組んだ。
試合の曜日、デーゲームかナイターか、対戦相手、球場客席数、天気、一軍レギュラークラス選手がいるかどうかなど、観客動員に影響すると見られる要素を変数として選定し、データを集計。使用球場の座席数などは判明していないものもあったので電話で直接尋ねるなどの手間もかけた。
集めたデータから予測式をつくるも、当初は寄与率が上がらず苦戦したという。しかし、要素の数を絞る、サンプル数を増やすなどして限られた時間の中で折り合いをつけ、一定の有効性を示す次のような形に仕上げた。
予測モデル:(楽天イーグルスの)ファームの観客動員数
=-1147.62
+551.41×対巨人戦(あり=1、なし=0)
+1468.25×対阪神戦(あり=1、なし=0)
+225.63×曜日(月=1~日=7)
+917.70×試合開催時間(デーゲーム=1、ナイター=2)
+515.88×特殊イベント(あり=1、なし=0)
数字を当てはめてみればわかるように、式は週末の試合やナイターがどの程度動員を伸ばすかを捉えている。巨人や阪神(ファームの交流戦で対戦)といった全国区の人気を誇るチームとの対戦による動員増の予測も織り込まれている。発表後、会場後方に座っていたファームのマーケティング担当の職員より様々な質問が投げかけられていたが、その様子を見るに“即戦力”の分析であるようだった。
成績発表を受けて金子さんは、「テーマは2つくらい思いついたのですが、今回は球団からデータをいただけるということだったので、世の中にあまりない二軍に関する分析に決めました。2日目の時点では、(予測式の)有効性が限りなく低く、ほとんど無意味ともいえる状況だったのですが、球団の方のアドバイスを参考に夜中まで頑張り、なんとかここまで持ってこられました」と喜びを語った。
上田室長も「金子さんの発表はまず分析のレベルが高かった。取ってきたデータ、観点、切り口、精度どれも実際のビジネスにおいて十分通用するものだったと思います」と評価した。