右肘靭帯損傷のダルビッシュ 最善の選択肢が手術である理由とは
昨年の田中と同じPRP治療ではなく、手術を勧められるのはなぜか
靱帯の部分断裂が発覚して以降、ダルビッシュは球団を通じて英文のコメントを発表しただけだが、ニューヨークに出掛けた9、10日の2日間を除いてはキャンプ施設に姿を現し、左投げでキャッチボールをするなど明るい様子を見せている。ダニエルズGMは、ダルビッシュの様子について「状況をしっかり把握して、頭の中も整理がついているようだ。球団、本人、医師の3者すべてが同じ意見でまとまっている」と話した。
手術という選択は、いろいろな点から見ても妥当だろう。昨年、同じように右肘靱帯の部分断裂を負った田中は、PRPと呼ばれる自己多血小板血漿療法を受けて、約2か月半後には戦列復帰を果たしている。ダルビッシュの場合、この治療法を含むリハビリでの治療は選択されなかった。
それぞれ靱帯の損傷具合が異なるために、一概に比べることはできないが、今回、ダルビッシュがトミー・ジョン手術を勧められた最大の理由は「2度目の負傷」という認識が強いからだ。「2度目」とは、昨年8月に負った右肘の怪我を「1度目」と数えているから。この時は「靱帯周辺が炎症を起こしている」という説明で、患部を休ませて炎症が引いたことを確認し、そこから肘の強化を始めた。ちなみに、この時にPRP療法は行われていない。
11月下旬に受けたMRI検査で炎症が引いたことが確認され、投球プログラムを始めたわけだが、今回、再び肘を痛めた。しかも、負傷箇所は前回と一緒。違いは「負傷の程度」で、前回は靱帯の線維には異常はなかったが、今回は線維に傷がついている。再びリハビリを選択することは大きなリスクがある。
また、一度切れた靱帯は自然治癒することがない。靱帯がそれ以上に切れることを避けるため、もしくは切れる速度を緩めるため、靱帯周辺の組織や筋力をアップさせることはできるが、対処療法に過ぎず、根本治療にはならない。「遅かれ早かれ手術をするなら、早いうちに」となるだろう。