【小島啓民の目】「遠慮」は技術向上の妨げに ホークスの注目株・牧原にあった積極性
野球の技術はどのタイミングで身につくのか
21歳以下といえ、相手はプロ選手ですからプライドもある中、アマチュアの指導者の意見を聞こうと思ったことが素晴らしいと思いました。牧原選手は、育成枠で入団した選手ですが、ウエスタン(2軍)リーグでは首位打者を獲得したことがある才能ある好打者です。彼の売りは、イチローばりの足の速さとバットコントロール。それに加え、思い切りがいい部分。しかし、ソフトバンクホークスの内野陣は層が厚く、なかなか1軍で出場する機会がなかったらしいですが……。
彼の質問に対しては、「テクニックは素晴らしいが、逆に何でも打ちにいってしまう傾向が強い。ボール球を安打にするのは難しい。もう少し、ボールを選択してはどうだろうか」や「しかし、ボールを選ぼうとすると消極的になりがち。牧原のいい部分が消えるのも問題」「投手が投げる投球で一番力があるボールは、高めの速い球で、なおさら、ボール球となれば安打にするのは難しい、もともと低めの球は得意な方なので、低めのボール球は振っても仕方ないが、高めの速いボール球は絶対に打たないようにしよう」とアドバイスしました。
今でも実行しているかどうかは分かりませんが、昨年の大会では、その後の試合では彼は忠実にそのアドバイスを守っていましたし、結果も伴ってきました。それをやってのける本人も凄いのですが……。
長く野球に携わっていますが、野球の技術がどういうタイミングで身につくのかは、未だに分かりません。
上手くなりたいという選手の思いが強いほど、その機会はやってくるのでしょう。技術習得に「恥ずかしさ」や「遠慮」は不要です。積極性あるのみです。「知らないことを知りたい」という欲求を持つことに対して年齢は関係ありません。
ご縁あって、21歳以下チームの選手(特に打者)とは未だ交流を持たせてもらっています。彼らの活躍に大いに刺激を受けています。ぜひ、彼らには日本を代表するプレーヤーになって欲しいですね。
【了】
小島啓民●文 text by Hirotami Kojima