大ケガ、移籍、巨人での2年…青木高広、引退を決めた瞬間の思い

33歳で引退決意、「荷物を1度下ろしたら、背負うことができなくなった」

 一方、巨人は2013年、前年まで左のセットアッパーとしてリーグ優勝に貢献していた高木康成投手が故障を抱え、山口鉄也投手にも登板過多で少しずつ疲労が見え始めた。左投手の補強が急務となる中で目を付けたのが青木だった。この年、すでに負傷から回復していた左腕はシーズン途中にトレードで移籍。巨人の一員になった。

 迎えた6月。古巣の広島戦。マツダスタジアムでリリーフ登板。好投し、移籍初勝利を挙げた。シーズン5勝を記録してリーグ優勝に貢献。「巨人にいた2年間で、2度もリーグ優勝できたことは幸せに思っています」と、それまで味わえなかった歓喜が野球人生でも最高の思い出の一つとなった。

 今年は若手左腕の台頭もあり、2軍でプレーし、出番を待った。「去年までは頭で、こうすれば、いいボールが投げられるという感覚を持ってました。だけど今年はできなくなってしまった」と苦悩を吐露。戦力外通告を受けてから、もう1度奮起しようとしたが、「荷物を1度下ろしたら、(再び)背負うことができなくなってしまいました」と、気持ちの立て直しが難しかったと振り返る。

 2軍でも不満な顔一つ見せずに、出番を待った。真面目に野球を取り組む姿勢は若手の手本になった。大きなケガを乗り越えて、チャンスを掴んだ。我慢を続けて優勝も経験できた。黙々と自分の仕事をこなす職人のような男だった。スター性のある選手も魅力だが、自分の道を地道に進んでいく姿も周囲の心を打つ。これからもその背中は子供たちへの道しるべとなっていくだろう。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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