導入4年で初めて3選手が受諾 岩隈が蹴ったQOは選手に有利、不利?

QO拒否の場合は“浪人生活”の可能性も

 球団公式サイトに「自分にとっても妻にとってもヒューストンしか頭になかった。もう一度、同じ仲間と戦いたかった」と話したラスマスは、決断に何の迷いもなかったことを明かしている。

 ラスマスに続き、オリオールズの捕手ウィーターズとドジャースの先発アンダーソンもQO受諾の返答をし、3人が契約延長に応じた。また、ブルージェイズからQOを受けていた先発エストラダは、回答期限の前にブルージェイズと2年2600万ドルという複数年契約を結んだ。

 一般にFAとなった選手は複数年契約を求めることが多いため、これまでQOを受諾する選手が現れなかった。近年はドラフトでの上位指名権を重要視する傾向にある中で、QOを拒否した選手と契約する場合、翌年ドラフトの最高指名権を失うという条件が、各球団に二の足を踏ませていた部分がある。実際に、昨季は契約交渉に難航したモラレスが、同年ドラフトが終了する6月まで「浪人」生活を送らなければならず(ドラフト終了後の契約は、指名権を失わない)、成績も振るわなかった。

 こういった「犠牲者」が発生する事実に、敏腕代理人ボラス氏をはじめ各方面から、同制度を見直す必要があるという意見が声高に唱えられていた。それに対し、コミッショナーを務めるマンフレッド氏は「しっかり機能している制度。特に問題だとは思わない」と静観の構えを見せていたが、今回3選手が受諾したことで、コミッショナーはその思いを一層強くしたことだろう。

 QOを拒否した16選手は別表の通り。もちろん、価値を認められた選手は争奪戦の末、何の問題もなく新契約を手に入れることになるだろう。一方で、今季所属先と再契約しなかった場合、ドラフト指名権が足かせとなりそうな選手もいる。今季の16選手のうちでは、ナショナルズからFAとなった遊撃デズモンドとメッツからFAとなった二塁マーフィーといったところだろうか。本格化するFA市場の中でも、QOを拒否した選手たちの動向に注目してみるのも面白い。

 <別表>
○投手
ウェイン・チェン(オリオールズ)
ヨバニ・ガヤルド(レンジャーズ)
岩隈久志(マリナーズ)
ジェフ・サマージャ(ホワイトソックス)
ザック・グリンキー(ドジャース)
イアン・ケネディ(パドレス)
ジョン・ラッキー(カージナルス)
ジョーダン・ジマーマン(ナショナルズ)
○一塁
クリス・デービス(オリオールズ)
○二塁
ハウイー・ケンドリック(ドジャース)
ダニエル・マーフィー(メッツ)
○遊撃
イアン・デズモンド(ナショナルズ)
○外野
アレックス・ゴードン(ロイヤルズ)
デクスター・ファウラー(カブス)
ジャスティン・アップトン(パドレス)
ジェイソン・ヘイワード(カージナルス)

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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