明治神宮大会を制した古豪・高松商 エースのトラブル乗り越え掴んだ栄冠
「今日は僕がいいピッチングを」と快投したエース、来春は96年夏以来の聖地へ
この頑張りにエースが燃えないワケがなかった。準決勝の後、浦の熱は39.2度まで上がっていたが、薬を飲んで静養に努め、ひと晩で熱は37.4度に下がった。本調子とは言えないが、チームとしてもプレーができるまで回復したと判断。試合前には「みんな、ゴメン」と謝り、挑んでいた。
「昨日は多田がいいピッチングをしたので、今日はエースである僕がいいピッチングをしようと思った」
最後は仲間が与えてくれた決勝のマウンドで優勝を迎えた。エースのアクシデントを全員でカバーしたからこそ味わえた瞬間でもあった。
県立の商業高校。全員が自宅から通い、グラウンドはサッカー部と共用だ。専用グラウンドや合宿所を持つ私立の強豪校とは差がある。それでも、チームを襲った窮地を乗り越えられたのは、日頃から恵まれない環境でも高い意識で練習に取り組んできた精神的な強さががあるからだろう。全国の頂点に立ったことは、同じような公立校にとっても励みになったはずだ。
春夏4度の甲子園優勝経験を持つが、96年夏から聖地の土を踏んでいない。出場が確実となっている来春のセンバツへ向け、「今回は体調を崩してしまったので、今後はしっかりケアをしていきたい」と苦笑いを浮かべながら、決意を語った浦。強い団結を武器として、56年ぶりとなる春の日本一を狙う。ひと冬を越え、どれだけ成長した姿を見せてくれるのか。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count