松田宣浩、ソフトバンク残留の裏側に迫る 決断までに何があったのか?
最終的にはすべてを把握した上で残留を決断した松田
MLBにおけるユーティリティープレーヤーは、決して控えというわけではない。ベン・ゾブリストはその代表格だ。内野のあらゆるポジションだけでなく、外野までこなし、2009~14年まで6年連続で140試合以上に出場。レイズからアスレチックスに移籍した今季は負傷もあって126試合の出場だったが、シーズン途中にロイヤルズにトレード移籍し、世界一に貢献した。MLB通算打率2割6分5厘ながら、数字には表れないチームへの貢献度を高く評価されている。ユーティリティーではあるが、どの球団に行っても、レギュラーと見なされてきた。
実際に、FAとなった今オフに4年総額5600万ドル(約68億円)の好条件で、レイズ時代の恩師でもあるマドン監督率いるカブスと契約した。松田が、そんなゾブリストのようになれる可能性があると高く評価する声があったわけだ。
パドレスやカージナルスなど、松田のもとには複数のMLB球団から条件提示があった。ただ、ソフトバンクが提示した4年総額16億円プラス出来高という条件には及ばなかった。
松田サイドは低い条件に長い間縛られる複数年契約よりも、むしろ1年契約で移籍し、実際にプレーを見せて評価を上げることで、来年オフにより大きな契約を勝ち取るというプランも考えていた。ただ、松田本人が残留会見でも明かしたように、日本でもほとんど守ったことのない遊撃や二塁をこなす「スーパーユーティリティー」としてプレーするイメージが沸かなかったという。そして、最終的には20日に尊敬する王会長と電話で話し、残留を決断した。
MLB球団関係者によると、パドレスは日本語での対応も可能なため、それまでも直接コンタクトを取っていた弁護士から翌21日には断りの連絡が入っている。まだ代理人のグリーンバーグ氏に正式な決断が伝えられる前だった。米メディアはパドレスへの取材を基に松田のソフトバンク残留を報道。本人による24日の正式発表よりも米報道が先行する形となった。その結果、グリーンバーグ氏の元には松田に興味を持っていた球団からの問い合わせが殺到したという。中には、正式オファーの準備をしていたという名門球団もあった。11月上旬からしっかり時間を使えれば、より早い段階での具体的な条件提示があり、興味を示すMLB球団も増えていた可能性は高い。
ただ、松田自身はその状況も含めてすべてを把握し、残留会見に臨んだ。“初動”の遅れが響いた中、「メジャーの評価」を聞いた上で、自分を必要として好条件を提示してくれた、愛するソフトバンクでプレーすることを選択した。
今後4年間のフル出場、そして10連覇を大きな目標として掲げている。この決断が正しかったと証明するべく、来季以降も福岡を熱く盛り上げていく。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count