打てる手はあまり多くない? ラミレス新監督が直面するセンターライン問題
現有戦力のやりくりが続きそうな中堅以外のポジション
梶谷で埋まった中堅以外の、弱みとなっているセンターラインのポジションは、絶対的なレギュラーが出現するまで、コンディションや相性などに目を向けながら現有戦力を働かせ、少しでもよい成績を残せるようにやりくりしていくしかない。
昨シーズン、捕手は嶺井博希、黒羽根利規、髙城俊人の3人が出場した。出塁、長打の量などから推定した創出得点をリーグの平均値に対する割合で示した指数、wRC+(Weighted Runs Created Plus)で見ると、嶺井は左投手に対して205(%)という素晴らしい数字を残している。現在、嶺井は二軍で調整中だが、左投手に対しては起用をすすめたい成績だ。
この3人の争いに割って入っているのが新人の戸柱恭孝である。ラミレス監督は開幕から戸柱をスタメンで起用しており、信頼を勝ち取っているようだ。ここでポイントなのは戸柱が一般的には右投手に強い左打者であること。3人の捕手は右打者で対右投手のwRC+は低い。仮に戸柱がレギュラーに定着できなかったとしても、投手の左右で使い分ける選択肢が生まれる。うまく起用すれば、捕手で記録していたマイナスが多少改善される可能性はある。
二塁、三塁、遊撃の3ポジションは非常に難しい状況にある。対戦投手の左右別の成績からいえそうなのは、左投手相手に倉本寿彦を起用するのは避けたほうがいいかもしれないということくらいか。しかし、ラミレス監督は開幕戦で左腕のジョンソンに対し倉本を起用しており、あまりとらわれている様子はない。
二塁の石川雄洋は投手の左右で成績の差はあまりないようだが、攻守ともに上積みが期待しにくい。石川が開幕に出遅れている間に出場機会を得た柴田竜拓がスターティングメンバーとして出場、決勝打を放つなど活躍を見せており、今後起用のバランスをどのようにとっていくか。
三塁は白崎が開幕からスタメンで出場しているが、昨シーズンは遊撃でも平均レベルの守備力を見せており、遊撃手の成績が振るわなければ再びコンバートを考えてもよいかもしれない。その場合、ロマックを三塁で使い、空いた外野の一枠を荒波翔、関根大気、桑原将志らで回すこともできる。
しかしこれらのポジションでラミレス監督ができることは、やりくりでマイナスを削り取る起用をしながら選手の成長を待つことぐらいで、状況を大きく動かすための選択肢はあまり多くないと言えるだろう。
【了】
DELTA●文 text by DELTA
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を2015年3月27日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』も2016年にオープン。