指名人数は日本の10倍 熾烈な競争社会を生み出すMLBドラフト
米国ではドラフトされた年にメジャーデビューする選手は稀
2014年のドラフトでは、ブレイディ・エイケン投手がヒューストン・アストロスから全体1位指名を受けたにも関わらず、身体検査で右肘の炎症が見つかったため、契約金の交渉で折り合いがつかなかった。入団することなく、1年間IMGアカデミーのプログラムでトレーニングを続けたが、肘の違和感を訴えて結局、トミー・ジョン手術を受けることとなった。そして、翌年のドラフトで全体17位指名を受けて、クリーブランド・インディアンスに入団。怪我が見つかったとはいえ、契約金の交渉で折り合いが付かずに入団をしないという選択が吉と出るか凶と出るかはさまざまだ。
一方、日本では、上位指名を受けた選手は即戦力として見られる場合が多い。今年もルーキーで開幕1軍を決めたのが、パ・リーグでは北海道日本ハムファイターズの2位・加藤貴之投手、3位・井口和朋投手、6位の横尾俊建選手、東北楽天ゴールデンイーグルスの1位・オコエ瑠偉選手、3位・茂木栄五郎選手、5位・石橋良太投手、オリックス・バファローズの1位・吉田正尚選手、7位・鈴木昂平選手、9位・赤間謙投手だ。もちろん開幕のチーム事情もあり、数試合で2軍降格となる選手もいるが、開幕戦の舞台にはこれほどの人数がドラフト1年目で一軍に名を連ねた。
一方でメジャーではドラフトされた年に、いきなりメジャーの舞台でプレーする選手というのは非常に珍しい。それでも1965年以降では、これまで21人の選手がマイナーリーグを経験せずにメジャーでプレーしている。
最近では、2009年ドラフト全体8位指名を受け、シンシナティ・レッズに入団したマイク・リーク投手だ。2006年には高卒で全体218位指名を受けたが、大学進学を選択した。そして3年後のドラフトで上位指名を勝ち取り、その年の秋季リーグで活躍。メジャーリーグキャンプに招待選手として参加し、見事ローテーションの5番手をつかみ取った。マイナーリーグを経験せずに開幕メジャーを勝ち取ったのは、2000年のゼイビア・ネイディ選手以来11年ぶりだった。
メジャーでは日本のプロ野球、そして米国四大スポーツのNBAやNFLに比べても、ドラフトされた選手が即戦力として起用される割合は極めて少ない。2014年のワールドシリーズでは、その年全米大学選手権の決勝でも投げたカンザスシティ・ロイヤルズのブランドン・フィネガン投手が史上初、同年で大学・プロ両方の最終シリーズで投げた投手となった。こういったストーリーは稀であり、選手たちは即戦力としてではなく、長期的な視点でチームの将来を担う存在としてドラフトされている。