「横の揺さぶり」で飛躍、巨人・菅野の投球を検証 9失点KOから修正なるか?

ストレート、ツーシーム、スライダー、向上を見せた3つの球種

 次に、投じている球種ごとのパフォーマンスを見て、菅野の高度な投球が、いかにして実現されているのかに迫りたい。

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菅野智之(巨人)の球種別投球割合と効力の変化

 球速が昨季の平均143.8km/hから146.0 km/hへと上昇しているストレートは、他の球種との兼ね合いからか投球割合自体は減少している。だが全投球に占める空振りを奪った割合=空振り率が倍増している。

 一方で発生した打球に占めるゴロの割合=ゴロ率は低下。球速のアップから推察するなら、縦方向のスピンが強くなったことで、ストレートの“おじぎ”が小さくなり、その結果、バットの上っ面を弾くようなケースが増えたのかもしれない。なお、ストレートに対し打者がスイングしてくる割合も44.4%から52.7%へと上昇している。決して打ちやすい球ではないにもかかわらず、打者が手を出さざるを得ない状況ができている。

 今季改良を施したツーシーム(※1)はストレート以上の進化を見せている。投球割合は昨季の8.9%から25.9%へと約3倍に増加させており、投球の軸になっている。バットに当たった際はその77.2%がゴロになる上、空振りを奪うケースも若干だが増えた。特に右打者の内角へ投じたとき、大きく食い込んでいく変化を見せる厄介な球だ。

 スライダー(※2)は今季の菅野の球種の中で18.1%と最も空振り率が高い。95個の奪三振の約半数、45個をこの決め球で奪っている。今季は、ストレートとツーシーム、スライダーの3球種で全体の約80%を占め、投球の中心となっている。

 パワーアップした球種がある一方で、効力が落ちた球種もある。昨季まで菅野の決め球だったフォークボールである。一昨年の2014年には、全投球のうち24.0%が空振りになっており、菅野の持ち球の中で最も空振りがとれるボールであったが、今季はその数字が9.2%まで下落した。今季、フォークボールを決め球に三振を奪った回数はわずか2回。また空振りだけでなく、ゴロ率も低下している。本人も効果的でないことに気づいているのか、投球割合を半減させている。

 ここまでをまとめ、仮説を立てるならば、今季の菅野のフィジカルのバランスや投球フォームは、フォークボールに代表される縦に変化するボールよりも、ツーシームやスライダーのような横への変化を見せるボールの効力を高める状態にあるのではないだろうか。

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