【高校野球】伝統校・横浜高の変革 平田新監督が目指す「自主性を育てる野球」とは

笑顔こぼれる練習風景、監督の怒声や厳しい上下関係なし…33歳新監督率いる強豪校が固定観念打破

「高校野球」「強豪校」「勝利」というキーワードが並んだ時、まず頭に浮かぶイメージはなんだろう? 白球を追って泥まみれになる球児の姿、日が暮れても薄暗い照明の中でバットを振り続けるようなキツイ練習、先輩後輩の厳しい上下関係、大きな声で指示を出す鬼監督……。そんな一昔も二昔も前のステレオタイプなイメージが浮かんでくるのではないだろうか。

 だが、どうやら高校球界にも時代に合った変化の波が少しずつ押し寄せているようだ。名将と言われた渡辺元智前監督の勇退を受け、昨年から平田徹新監督の指揮の下、船出をした名門・横浜高校も例外ではない。

 横浜高校と言えば、春夏合わせて甲子園優勝5回を誇る強豪で、卒業生には愛甲猛、鈴木尚典、松坂大輔、涌井秀章、筒香嘉智らが名を連ねる。その伝統校を率いる平田監督は今年33歳。野球部の他にも保健体育科担当教諭として生徒と接する中で、時代の変化に伴う子供たちの変化を感じ、同時に指導方法を変える必要性を感じていた。そして、新監督の命を受けた昨年、勝つ野球をたたき込む指導方法から、生徒の自主性を育てる指導方法に、思い切って方向転換した。

 6月下旬、横浜市能見台にある同校グランドへ練習見学に向かうと、そこには笑顔で野球に取り組む生徒の姿があった。監督の怒声が飛ぶこともなければ、上下関係で必要以上に張り詰めた雰囲気もない。夏の大会を目前に控えた追い込みの時期でも、生徒たちに疲れ切った様子はなく、野球をやらされている雰囲気もなし。平田監督自らが打撃投手を務めるロングトスでは、監督から技術的な指導は入らず、木製バットを握った生徒たちが思いのまま気持ちよさそうに打球を飛ばす。シートノックでミスが起きると「今のプレーはどうした方がいいんだ?」という監督の声をきっかけに、生徒同士が話し合って解決策を見出し、次のプレーに生かしていた。

 1週間の流れを見ても、詰め込みすぎにはなっていない。月曜は練習が休みで、火曜と水曜は通常練習、木曜はウェイトトレーニングの日で全体練習はない。金曜に再び通常練習を行い、土曜と日曜は練習試合。特に投手陣は、月曜日以外の週2日をキャッチボールを含めたノースロー調整とし、高校野球の最大の弊害とも言われる“投げ込み過ぎ”をなくす取り組みをしている。

 今年も神奈川県大会で優勝候補に挙げられるチーム力を誇るが、監督は代替わりしたばかり。伝統ある強豪校として結果が求められる現実。目に見えないプレッシャーを跳ね返すかのように“変革”に踏み切った平田監督の思いを語ってもらった。

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY