高橋尚成氏が語る日米球界を経て得た結論、そして巨人優勝のカギは?
重要なのは「teaching」ではなく「coaching」
――トークショーでは、保護者・指導者の皆さんに「子供たちにはteachingじゃなくて、coachingをして下さい」と呼び掛けていました。そのメッセージに込められた思いを教えて下さい。
高橋:上から物を言われたら、すごく嫌な思いをするのは、誰もが分かっていること。それは子供でも一緒だと思うんです。自分たちが子供の時に何ができていたかを考えた時、できることよりできないことの方が多かったはず。それを忘れて「こうやれ」「そうじゃないだろ」って頭ごなしに言うのは、果たして正解なのか分からない。
――確かに、子供だって嫌な思いはしますよね。
高橋:もっと大人になってから言うんだったら理解できると思うけど、まだ小学生のうちはね。頭ごなしに言うと、親の顔を見て野球をしたり、監督やコーチの顔をうかがいながらプレーするようになってしまうから、伸びるものも伸びなくなると思うんです。だからこそ、教えるteachingではなく、アドバイスするcoachingに徹してほしいですね。
――ここからは古巣・巨人について、お話を聞かせて下さい。開幕当初こそ苦戦が続きましたが、現在は逆転優勝を狙える2位につけています。7月は月間MVPを獲得した左腕・田口麗斗投手の活躍が光りました。4、5月に比べて投球内容が安定したように思えます。
高橋:一番に体力が付いたことでしょうね。4月や5月は、6回くらいになると一気にばたつく感じがあった。でも、オールスター明けから、それが見られなくなった気がします。
――若手選手は1年戦える体力がつけば、自然と安定した成績になるようですね。
高橋:そうですね。それに加えて、投げ方も少し工夫したように見えます。以前は投げる時に、左足の踵がギュッと高く上がっていた。でも、最近はその上がりが浅くなりました。踵が上がり過ぎると、フォームや軸がぶれる。そうすると、投げる球に直結して制球もぶれる。いい投手になるには、フォームの無駄を省いていかないといけないと思います。
――田口投手は無駄が少なくなったということですね。
高橋:やっぱり無駄のない投手にいい投手が多いと思います。無駄が少なくなれば、長いイニングを投げられるし、勝てるようにもなる。ちょうど打線もつながり始めたので、いい相乗効果になっているんでしょうね。