【高校野球】初出場の公立高校・嘉手納の挑戦 3回戦で敗退も強力打線で足跡残す
選手のほとんどが地元中学の出身、沖縄野球の歴史に新たな1ページ
3番・大石は「諦めない姿勢を見せられた」。途中、何度も野球部を辞めようと思ったが、ナインに必要だと引き留められた。そんな思い出がよみがえってきた。レフトへの2点二塁打は自分一人の力ではなかったと振り返った。
4番の知花拓哉は「仲間ながらすごいなと思って見ていた。その波に自分も乗れたかなと思う」とレフトへのヒットで一、三塁とチャンスを広げ、5番の比嘉花道は「思い切り自分のスイングするだけ」とライトへ6連打目のタイムリー。東邦(愛知)が八戸学院光星(青森)戦で見せたような逆転劇を願ったが、続く古謝巧真の打球はいい当たりのショートライナー。走者が戻れず併殺打になった。続く村浜達成も倒れ、6連打4得点止まり。5-13で敗れたが、諦めない姿勢は観衆に届いた。
選手のほとんどが地元の嘉手納、読谷、古堅と校区が隣り合う3中学の出身。あるナインは入学時に「名前を知らない人はいなかった」というほど。地元の好選手が嘉手納に入ることを聞いて、入学を希望し、受験した選手もいる。元沖縄水産のコーチで、故・裁弘義監督の下で野球を学んだ大蔵啓人監督が地元で強いチームを作ろうと奔走した。元横浜高野球部長の小倉清一郎氏にコーチを依頼したこともあった。一昨年の冬、高いレベルの野球をする小倉氏の指導を実戦できる生徒が少なく、グラウンドには怒号が飛んだこともあった。
甲子園に来てからも、「高めの真っすぐは振るな」「変化球も捨てて、コンパクトなスイングで低めの直球だけを狙え」「ある一定のところから上空の風の向きが変わるからフライに気をつけろ」など、全国の舞台で戦うための助言を実践した。前橋育英の好右腕・佐藤の攻略につなげた。
興南、沖縄尚学、糸満、美里工、浦添商、八重山商工など群雄割拠の沖縄。嘉手納の奮闘はまた沖縄野球に新たな1ページを刻んだ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count