選手の性格まで考慮した起用がピタリ U-18代表を率いる小枝守監督の手腕
選手の性格まで把握した適材適所の選手起用がズバリ
気持ちの強い選手を先頭に立たせたのは投手起用も同じ。ファーストラウンド、今大会の開幕戦とセミファイナルの初戦には寺島を起用した。初戦と2戦目、球場は異なり、マウンドの対応など環境変化の順応も求められた。相手は香港、中国だったが、寺島が相手にしたのは目の前の敵ではない。大会を通じて日本が勝っていくために「勢いをつける投球を心がけました」と一切の慢心をせず、ピッチング。2戦合計で12イニング、37人に対して25奪三振、1本のヒットすら許さなかった。小枝監督は「ここは落とせないんだよ、というマウンドは寺島。彼は本当にハートが強い。それを意気に感じて、こちらが何も言わなくても理解をしてくれる」と気持ちが強く、浮足立たない投手を立てた。日本は完全に勢いに乗った。
もちろん、野球の理想は打って守って勝つこと。決勝は台湾に1-0、セミファイナルの韓国も3-1と、日本は決して強力打線と言えなかった。だが、それは百も承知。地方大会、甲子園大会を通じてメンバー選考をする際に「今回は高いレベルの投手中心のチームになる」と考えた。国際大会は金属から木製バットになるため「普段から使っていない高校生が急にバットを持ち替えて打てるほど甘くない」と、守りと機動力で勝つことを、苦渋の末、決断。守備、バントのうまい選手として9番・佐藤をショート、中学時代に陸上でも名を馳せた八戸学院光星の伊藤優平を2番・セカンドで固定した。最初の壁だったファーストラウンドの台湾戦では、投手の作った流れを無駄にしないために5犠打で攻撃のリズムを作って勝利。小枝監督は「ことごとくバントをみんな決めてくれた。こちらのやりたい野球を実践してくれた」と感謝した。大会中に自分の判断で犠打を決める選手も出たほど作戦は浸透し、チーム力は次第に高まっていった。
各高校のエース、4番、主将、プロ注目選手を多く抱えながら、束ねた指揮官の采配。ぜいたくな投手陣に、勝って当たり前という声も聞こえてくるが、日本の優勝は2011年以来5年ぶりで2大会ぶり。条件の悪い敵地での優勝は、2005年の第6回大会以来11年ぶり。アジア諸国のレベルも上がっており、決して簡単な戦いではない。次なる目標は、昨年、準優勝に終わったU-18ワールドカップ。メンバー構成は変わるが、来年の世界大会でも勝てるチーム作り、采配を期待したい。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count