1軍再昇格は9月28日…今季大半は2軍生活の伏兵・嶺井がDeNAの夢つなぐ

代打起用の指揮官も驚き「まさかこんな大きいヒットを打つとは」

 新人の戸柱に正捕手争いで敗れ、2軍落ちが長かったDeNA嶺井博希捕手が、チームの命運を分ける大一番で、とてつもない仕事をやってのけた。

 3-3の延長11回。引き分けなら巨人の広島行きが決まる瀬戸際に、先頭・倉本がクローザー澤村をマウンドから引きずり降ろす右足甲直撃の強襲内野安打で出塁。緊急リリーフした田原から、エリアンがきっちり送りバントを決め、1死二塁とチャンスを広げた。その直後だった。打席に立った嶺井が、初球128キロのスライダーをしっかり捉えると、打球は左翼フェンス直撃の決勝タイムリーとなった。

 CS初出場のチームをファイナルステージに導く貴重な一打を放った3年目の控え捕手は「チームのために何とかつなごうと思った」と、敵地ながらDeNAファンの大歓声で迎えられたお立ち台で、運命の打席を振り返った。11回裏にはマスクをかぶって守護神・山崎をリード。「(打球が)抜けた瞬間、守備(リード)をどうしょうかと思いましたけど、山崎康が踏ん張ってくれた。(その頑張りを)信じてリードしました」と笑顔を見せた。

 昨年は高城らと正捕手争いをしたが、今季は新人の戸柱が正捕手、高城が控えとなり、2軍で開幕を迎えた。6月15日に右の代打要員として1軍登録されてマスクもかぶったが、7月中旬に代打の切り札、後藤が昇格したため、再び2軍へ。2度目の1軍昇格を果たしたのは、実に9月28日のことだった。「今年はファームが長かったけど、一日一日積み重ねた結果が今日に繋がったと思います」と2軍での努力を誇ると同時に、「チームみんなの頑張りで、この位置にいることができました」と、球団初CS出場を叶えてくれたチームメイトへの感謝を忘れなかった。

 大舞台で活躍した伏兵・嶺井について、ラミレス監督も「早い段階で代打の準備をさせていたが、まさかこんな大きいヒットを打つとは思っていなかった」と驚きを隠せなかった。8回に正捕手・戸柱の代打として出場。この時は二塁フライに倒れた。守備を含めてギャンブルにも見える代打策だったが、指揮官は「他の捕手とは違う配球をしてくれるのではないかの期待もあった」と迷わず送り出した。

 嶺井は1年目だった2014年6月21日の西武戦、延長10回2死一、二塁の場面で放ったプロ初安打が逆転サヨナラ三塁打となった勝負強さを持っている。データ重視の指揮官は、頭の隅にこのデータを置いておいたのかもしれない。ラミレス監督の起用に結果で答えた伏兵が、究極の下剋上の夢を大きく膨らませた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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