「障害」を未然に防ぐために―宮城県で実技講習会「プロはなぜ壊れないのか」
「肘が下がっている」とはどういうことなのか
投手で「肘が下がっている」と指摘されたことがある人は多いだろう。「では、投球動作のどこで肘が下がっているのか」と黒川氏。投球動作を分解した絵を使い、「どこで肘が下がっていると悪いのか。『肘が下がっている』と指摘されても、フォームと照らし合わせず、なんとなく肘をあげていると思います。感覚と実際は異なります」と指摘した。投手の投球動作は2秒足らず。その中でボールにエネルギーを与える時間はわずか0.05秒で、肘には20?30キロの力がかかるといった解説もあった。
2000年から04年まで東北福祉大でトレーナーをしていた黒川氏。現広島の石原慶幸捕手の学生時代のエピソードを交え、「(石原は)調子が悪くても来なかった。危ないなと思ったら来ました。そして、ここが悪いから見てほしい、ここが張っているから見てほしいと、自分の体を知っている選手でした。自分の体を知ることで野球は上手くなります。自分の体の変化を気づけるようになりましょう」と話した。
午後からは各校の投手など30人が検診を受けた。持ち運びができる超音波検査装置で肘を診てもらったり、医師と会話をしながら可動域などをチェックしたりした。その他の部員はストレッチのやり方やトレーニング方法の指導を受けた。
質疑応答でいの一番に質問した東北学院榴ケ岡高の吉田悠人投手(2年)は「肘の内側を痛めたことがあり、そういう時に何をしたらいいのか知ることができました。また、ストレッチで(障害の)予防になることもわかり、ためになりました」と満足そうだった。投球フォームをこれまでも動画で撮影していたというが、「どこを変えていいのか分からなかったけど、意識するところがわかりました」と、チェックポイントも把握できた様子だった。
1、2年生7人で練習している中新田高の佐々木貴紀主将(2年)は超音波検査を受け、「異常がないと言われてホッとしました」と安堵。「体の使っていないところや気にかけていないところがあり、これまで知らなかったことを知る機会になり良かったです。筋肉のことやケアのことを教えてもらったので、これから生かしていきたいと思います」と今後を見据えた。
これから自分と向き合う時間が多くなる季節。この日に得た知識や情報をもとに自分を磨き、また、チームメイトとも指摘しあって練習に励み、シーズンが始まった時にはベストパフォーマンスを披露してほしい。
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高橋昌江●文 text by Masae Takahashi