依然パ最強打者の柳田悠岐に“弱点” 成績低下に影響する“打球”とは
各球団が採用した「柳田シフト」も影響? 本塁打減少にも課題が…
もうひとつ、ゴロが多かったPull打球で成績が上がっていないことと関係がありそうなのが「柳田シフト」だ。パ・リーグ各球団は、柳田の打球方向の特徴を意識し、内野手の守備位置を一塁側に寄せるシフトを採り入れ出していた。昨季は深い守備位置のセカンドや二塁ベースの後ろあたりに構えるショートに、本来なら安打になりそうなゴロを処理される場面が度々あった。
実際、「柳田シフト」はどの程度効果があったのか。2015年、63.8%だった柳田のゴロアウト%(ファウルを除く全ゴロ打球がアウトになった割合)は、昨季は72.7%まで悪化している。この差8.9%を昨季の柳田の全てのゴロ打球数183に掛けると、16.3。柳田は前年レベルより16.3回多くゴロでの出塁を阻まれたといえる。
もし安打が16本増えたとすると、柳田の打率は.306から.344へ、また16.3回の出塁がすべて単打であったとしても、wOBAは.435から.462まで上がる。ゴロ安打の減少がすべてシフトにより引き起こされたものではないが、ゴロで出塁を稼ぐことが多い柳田に対し、一定の効果をあげ、これが成績に影響を与えた可能性はある。また、柳田のPull打球のゴロ%が年々上昇していることを考えると、シフトの効果は今後さらに見込めるようになるかもしれない。
最後に本塁打の減少にも触れておきたい。柳田は2015年の31本から昨季は18本と、本塁打を大きく減らした。もちろん前年に比べ69打席少なかったことの影響もあるが、本塁打のペースが落ちていたことは間違いないだろう。
この本塁打減少もPull打球の中味が大きく関わっていそうだ。柳田のPull方向へのフライに占める本塁打は、2014年から6/15(40.0%)→15/34(44.1%)→3/18(16.7%)と推移しており、昨季数字を大きく下げている。これは他の打球に比べ、本塁打となる可能性を秘めているライト方向へのフライそのものの減少が、原因のひとつとみられる。これを増やすことが、本塁打を増やす上での条件となってくるだろう。
※1 出塁力・長打力両面から攻撃力を評価し、それがリーグ平均に対しどれだけ抜きん出ていたかを表す指標。100が平均。130であれば「リーグの平均的な打者の130%、約1.3倍の働きを見せた」という意味。
※2 出塁力・長打力両面から攻撃力を評価し、それを同じ打席数を得た平均的な選手と比較した差分を算出し、得点に換算して表したもの。
※3 出塁力・長打力両面から攻撃力を評価した指標。出塁率と長打率を足したOPS(On-Base Plus Slugging)を、より精密にしたものに近い。
【了】
DELTA●文 text by DELTA
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(http://1point02.jp/)も運営する。