広島黄金期を支えた俊足OBが語る盗塁のコツ、スイッチヒッターの意義
大切なのは「いくつ盗塁するか」ではなく「どれだけホームに戻ってくるか」
「『いくつ盗塁するか』ではなく『盗塁を決めたランナーがどれだけホームに戻って来ているか』が大事だと思います。盗塁が得点に結びついていなくては意味がありません」
盗塁を決めてホームに戻るためには、後続のバッターが適時打を打つ必要がある。現役時代、高橋氏は後に続くバッターが打ちやすい環境を作ることも考えていたそうだ。
「『いつ走るか』ではなく『僕が出たら盗塁する』というイメージを相手に持たせたかったですね。なので、早いカウントで堂々と走っていました。早めに走らなければ、次のバッターも打ちに行けません。後ろのバッターを楽にさせてあげることも心掛けていました」
昨シーズンはオリックスで1軍打撃コーチを務めた高橋氏は、自分の経験を踏まえて導き出した盗塁の“心得”を後輩たちにも伝えた。高橋氏が「どんどん行け」と背中を押した糸井嘉男外野手は、昨季はオリックスで53盗塁を記録し、36歳ながら盗塁王を獲得。今季から移籍した阪神では、2盗塁を決めている。
「走塁コーチではないので何か言える立場ではなかったのですが、『どんどん行け』とは言いました。糸井も怖がりです。『失敗を気にすることはない』と言いました」
俊足の持ち主でも出塁しなければ、武器は生かせない。どうしたら多く出塁できるか、どうしたら多く打席に立てるか。そう考えた時、1軍定着を目指す若手選手はスイッチヒッターに転向して、出場機会を増やすのも1つの手だろう。高橋氏自身、1975年に入団後、程なくしてスイッチヒッターに転向し、数年後には1番打者として“赤ヘル打線”の起爆剤となった。