広島黄金期を支えた俊足OBが語る盗塁のコツ、スイッチヒッターの意義
かつて俊足野手の代名詞だったスイッチヒッター、現在は減少傾向に
現在は数が減ったスイッチヒッターだが、球史を振り返ると数々の名スイッチヒッターが活躍している。高橋氏と共に広島黄金期を築いた正田耕三氏、山崎隆造氏もスイッチヒッターだった。両氏共に俊足が持ち味で、正田氏は1989年に34盗塁で盗塁王にも輝いた。セ・リーグ年間盗塁記録保持者でもある“青い稲妻”松本匡史氏(巨人)、大洋時代には“スーパーカートリオ”の1人として鳴らし、1986年から3季連続盗塁王に輝いた屋敷要氏もスイッチヒッターだった。
機動力を誇る広島でも、現在出場登録された野手のうちスイッチヒッターは上本崇司内野手1人だけ。スイッチヒッターが影を潜めつつある傾向について、高橋氏は「足が速い選手には、最初から左で打たせているからではないか」と分析する。
「今は情報が多いですから『足が速い選手』というデータがあれば、最初から左で打たせています。左バッターをわざわざ右に変える必要はありません。昔は右で打っている選手が、足が速いと分かれば『これならスイッチをやらせてみよう』と考えて転向させることが多かったですね。今はスイッチにする前に、左バッターになっています」
高橋氏の言う通り、昨シーズン広島で最多28盗塁をした田中広輔内野手は左打者。今シーズンはここまで6盗塁を決めている安部友裕内野手も左打者だ。時代の流れと共に足の生かし方は変わりゆくものなのかもしれないが、機動力が攻撃の大きなカギを握る事実は変わらない。4月21日現在、両リーグトップのチーム盗塁数「19」を誇る広島は、今季も機動力を生かした野球でリーグを制し、悲願の日本一を達成するのか。黄金時代を支えたOBも第2次黄金時代の到来を待ちわびている。
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篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki