昨夏から大きく成長した2人のエース、強豪ひしめく“投手王国”兵庫がアツい

名門・育英エースの野上、昨秋の悔しさをバネに奮起

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育英エースの野上諒【写真:沢井史】

 そしてもう1人、今春の県大会で評価を上げた右腕がいる。名門・育英のエース、野上諒だ。昨秋の近畿大会では初戦で履正社を相手に8回で14安打を浴び、8失点でコールド負け。打ち込まれたショックを引きずり「食欲がなくなって体重が3キロも落ちてしまった」と本人は振り返る。安田聖寛監督も「責任感が強くて、自分が抑えないと、という気持ちが強すぎたのでは」。

 冬場はまずその体重を取り戻し、走り込みやトレーニングで下半身を鍛え直した。今春の県大会ではストレートにキレが増し、空振りを奪えるシーンが増えた。指揮官も「ストレートの威力がついたし、ピッチングにメリハリがつけられるようになった」とエースを評価。6月末に行われた履正社との練習試合では、6回途中で足がつり無念の途中降板となったが、強打者・安田尚憲から2打席連続三振を奪うなど、5回2/3を投げ6安打3失点だった。

 秋のことを思うとまずまずの内容ではあったが、試合後の野上の表情は晴れやかではなかった。もちろん、途中降板に対する悔しさもあったが「今日は1点もやらないつもりでした。秋より抑えられたことは良かったけれど、(ミスからの失点に)味方のミスをカバーできなかったことが反省点です。夏は何が起こるか分からないので、ミスを取り返すことができるピッチングをしないといけない」と自己に厳しい。それでも「今日のピッチングで自分はまだまだだと感じました。ここから夏に向けてさらに上げていくだけです」と、さらなるレベルアップを誓った。

 私学、公立と実力校が名を連ねる兵庫大会は今夏も楽しみな要素が多い。7月8日に明石トーカロ球場で開会式が行われ、神崎VS三木の開幕試合を皮切りに熱戦の火ぶたが切って落とされる。

【了】

沢井史●文 text by Fumi Sawai

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