ひたむきな姿勢に日本との共通点 アメリカの高校野球事情
印象的だったスタンドの風景、「やっぱりメジャーリーガーになるのが夢」
7年前のポルテイジ高インディアンズとの『Sectional』決勝では4-1でブルドッグスが勝利し、インディアンズの選手たちは唇を噛み締め涙をこらえていた。日本の高校球児のように泣き崩れるのも心揺さぶられるが、このような姿勢もグッと来る。
「もう少しだった。やはりブルドッグスは強かった。我々は毎年、結果を残しているようなチームではない。ここでプレーできたことを誇りに感じて欲しい。まぁ、また来年があるよ」
当時、インディアンズのティム・プロウスキーHCは充実した表情で語ってくれた。近年、インディアンズは学校をあげてスポーツに力を入れて始めており、本拠地球場を改修したり、将来を感じさせる途中だった。HCの瞳は未来を見据えていた。
よく言われるように、この年代では基本技術などは日本の高校生が「成熟」しているように感じた。しかし時折魅せるスピードやパワーは将来のメジャーリーガーを想像させるに十分。そして印象的だったのは、スタンドで見かけた風景だった。おそらく、決勝までの途中で負けたチームの選手なのだろう。試合を見ながら何度も頭を下げてうなだれ、そのたびにとなりのガールフレンドに慰められていた。
「僕は卒業だから、高校の州王者にはなれない。まずは大学へ行ってカレッジベースボールに出場すること。やっぱりメジャーリーガーになるのが夢なんだ」
そのティーンエイジャーは落ち込んだ様子で言葉を絞り出していた。胸が熱くなった。
技術、パワー、スピード、精神論、メンタル、システム……。日米について語られる異点は多い。だがボールに対するひたむきな姿勢は、時代も洋の東西も関係なくそれらを忘れさせてくれる。彼らを見ていると、高校野球が無性に見たくなる。
【注】取材時の10-11年ならびに今シーズン16-17年の成績はブルドッグス(10-11年)16勝11敗、(16-17年)18勝9敗、インディアンズ(10-11年)15勝12敗、(16-17年)12勝16敗。大会システム、レギュレーション、出場校数などは毎年のように変化。※「死のロード」…毎年、夏の甲子園期間中、本拠地とする阪神タイガースは球場を使用できず、ロードゲームを転々とする。この期間に成績を落とすことからこう呼ばれる。
(山岡則夫 / Norio Yamaoka)
山岡則夫 プロフィール
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。