日本1強ではダメ…侍J女子代表が国際大会で見せた女子野球発展への取り組み

橘田監督「女子野球という競技が好きだし、普及させたい。女子野球で日本が1強ではいけない」

 よし、やろう! 橘田監督は、パキスタンとの試合後にトスバッティング講座を開き、一緒にクールダウンをしようと即決した。アメリカ人ながらパキスタン代表を率いるジャスティン・シーガル監督とは、ワールドカップの技術委員で一緒だった縁があった。また、日本代表監督になることを「想像したことがなかった」という橘田監督に、かつて「日本で指導者をしているけど、代表のユニホームを着ないのか」と尋ね、初めて日の丸を意識させてくれたのが、シーガル監督だったという。

 トスバッティング講座が終わると、日本の中本真也トレーナーによるクールダウンの指導もあった。国際大会で行われたこのような取り組みに、橘田監督は「どこのカテゴリーでもないことだと思うんですよ」と胸を張る。

「でも、それを女子野球から発信できたら、それはそれで新しいスポーツの在り方だと思うんですよ。女子野球という競技が好きだし、普及させたい。どうにかしたいんです。女子野球で日本が1強ではいけない。どうやって他の国の皆さんに日本の野球を取り入れてもらうか。『日本、こういうことをやっていたよ』『日本のこういうところが素晴らしかったよ』というところを少しでも感じてもらい、会得してもらうことが、日本が女子野球を引っ張っていくためには必要だということを選手には話してきました」

 アジアチャンピオンを目指しながら、日本には世界の女子野球をけん引する責務がある。この日の試合中には、パキスタンの左翼手が中堅手とフライを追って交錯し、左ひざを打撲した場面があった。パキスタンにはトレーナーのような役割のスタッフがいないため、手当てしたのは日本の中本トレーナーだった。「フィールドで見せてもらった時、足に力が入らなくて曲げると痛いとのことでした。ベンチに帰りましたが、無理だなと思ったので氷を用意して行きました。すでに腫れてきていたので、アイシングで腫れを防ごうと思いました」と中本トレーナー。試合後にはクールダウンでストレッチも指導し、「必要なことなので、何かお伝えできることができれば。ストレッチも橘田監督の案だったんですけど、すごくよかったと思います。そういう時間や機会があれば、どんどんやっていった方がいいなと思います」と話した。

 パキスタンの選手たちからは「楽しかった」「こんなに仲良くさせてもらって嬉しかった」「日本は好きなベストチーム」「勉強になった。やってくれてありがとう」といった声が聞かれた。戦いの場ではあるが、ゲームを終えれば、ともに野球を愛する仲間。グラウンドには笑顔が溢れていた。

 世界の女子野球をリードする日本はアジアチャンピオンを目指しながら、女子野球の発展にも力を入れている。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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