日本でおなじみユニホームスポンサー、MLBでは反発の可能性がある理由は
ユニホームスポンサー導入で球団「格差」が助長?
MLBではビジネス要素をユニホームに設けない分、ユニホームの色を変化させることで、様々なメッセージを伝えようとしている。例えば、先月開催されたニックネーム企画のような次世代に向けた取り組みはカラフルに。母の日に開催される乳がん撲滅を意図した取り組みでは女性をイメージしたピンクへと変化させる。各球団は偉大なる関係者の死を称える際にもユニホームに特別なパッチをつけるなど、リーグ、そして球団が本当に大切にしていることを表現するためにスペースを空けているような状態だ。
実はMLBがスポンサーを取り入れるのに躊躇する要因として考えられる例が一つある。2004年、MLBはコロンビアピクチャーズとの試みで、夏に公開予定されていた映画「スパイダーマン2」の宣伝としてファースト、セカンド、サードの各ベースにロゴを掲載する取り組みを進めていた。だが、この試みが公になった途端にファンからは強い反対の声が上がり、結果的にこの取り組みを白紙にせざるを得なくなった。伝統と歴史が害されることに強い反発が起こったのだ。
そして、もう一つ懸念される点としては、胸スポンサーを取り入れて各球団にユニホームスポンサーの権限を与えた場合、広がる可能性がある「格差」だ。地元局との放映権は各球団に委ねられているため、大都市に属すビッグマーケットの球団と、そこまで規模の大きくない本拠地に属すスモールマーケットの球団とでは、収入に格差が生まれている。そこでユニホームスポンサーまでも各球団が権限を握れば、より全米での露出機会が期待できるビッグマーケットの球団に、さらに資金が集中する可能性がある。
地元企業との契約に限るなど、いろいろな制約を付けてこそ成立する可能性もあるが、これまでの歴史に傷を付けかねないリスクの方が大きい。だが、これまでもMLBをはじめとするプロスポーツビジネスは価値を高めるために新たな取り組みを仕掛けてきた。胸スポンサー導入の流れが大きくなればなるほど、MLBだけではなく他に発展していく可能性がある。日本の野球界においてもその価値をどう考えていくのか、今後の流れに注目していきたい。
(「パ・リーグ インサイト」新川諒)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)