「少しでも追いつきたい」西武源田の後継者、美技連発でアジア選手権“2冠”

源田がトヨタ自動車在籍時は外野も「シートノックは常にショートを守らせてもらった」

「少しでも追いつきたいという思いでやってきてよかった」

 藤岡には、追いつこうと手本にしてきた背中がある。今季、新人選手としては56年ぶりとなる全試合フルイニング出場を果たした西武のショート・源田壮亮内野手だ。源田がトヨタ自動車に在籍時は外野を守ったが、「シートノックは常にショートを守らせてもらって、源田さんが抜けたら自分が守るという気持ちでやっていた」と藤岡。今大会のベストナイン遊撃手と最優秀守備賞を受賞し、「後ろから源田さんの守備を見ていて、フットワークの軽さだったり、ゴロを捕りに行く構えだったり、いろいろと学べた。いい見本がいたらから、こういう賞もいただけたと思う」。記念品に視線を落とし、源田に感謝した。

 チームへの貢献は守備だけではない。日本の3番打者としてバットでも魅せた。前日のセミファイナルのチャイニーズ・タイペイ戦で8回コールドを決めるタイムリーを放ち、「なんとか決勝の前に1本、出しておきたい気持ちが強かったので食らいついた。これで気持ち良く、決勝に行くことができる」と話していた藤岡。初回の第1打席は空振り三振に倒れたが、4回1死でレフト前ヒットを放った。

「前に行かないように軸足をキャッチャー寄りに開いて、体を残した。それがうまくハマった」と1打席目の反省を生かし、チーム初安打をマーク。3回まで無安打に抑え込まれていた打線に勇気を与えた。「スライダーがよく、真っすぐキレていた。投手戦になるなと思った。なんとか1本目を出せて、ここから流れを変えていくぞという1本になったと思う」とうなずいた。

 5回には、北村祥治内野手(トヨタ自動車)のソロ本塁打の後、2死無走者からレフト右へヒット。果敢に二塁を陥れ、チャイニーズ・タイペイにプレッシャーを与えた。4番・笹川晃平外野手(東京ガス)が四球で歩き、5番・菅野剛士外野手(日立製作所)の中飛をチャイニーズ・タイペイの中堅手が落球。点差を広げる足がかりを作った。「3打席目もそれで打てた。試合の中で修正できたので、それは本当によかったなと思う」と納得顔だ。

 大会の終盤にかけて攻守に調子を上げ、2大会ぶりの金メダル獲得の大きな力となった。「ミスもあったが、いいところでチームを救えたのは自信になる。次は日本選手権。自チームでの戦いになる。負けないようにしたい」。ともに日の丸の誇りを胸に戦った仲間は、再び、覇権を争うライバルに戻る。気持ちは次なる戦いに向かっていた。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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