ソフトB打線、楽天岸を“攻略”できたワケ 5回92球での降板を呼んだ粘り
直球を1球で仕留めた内川は「立派」
追い込まれても、粘って粘って球数を投げさせる。攻撃の鉄則ではあるが、それを球界を代表する投手相手に遂行するのは簡単なことではない。9番に入っていた高谷は5回の第2打席でもフルカウントまで持ち込み、7球目で四球を選んだ。この回で岸の球数は92球に達した。
楽天の梨田昌孝監督は「岸もちょっとあっぷあっぷの状態だった。球数とかよりも、ボールも先行して、しんどそうなところだったので、スパッと代えた」と説明。岸の投球内容と、中5日という状況もあっただろう。5回で降板させたが、仮に80球台だったならば、6回もマウンドに上がっていたはずだ。
「5回で岸が降板したのも大きい」とも藤本コーチは言う。楽天はファーストステージから戦ってきており、中継ぎ陣の登板がかさんで来ていた。ファーストステージから5連投となった福山も第3戦で敗戦投手に。早い回で岸を引きずり下ろせば、それはソフトバンクにとっては追い風となるのは明白だった。
そして、6回だ。岸からバトンを受けた宋家豪(ソン・チャーホウ)。2日前の第2戦では内川、松田を全球真っ直ぐ勝負で空振り三振に切っていた台湾人右腕だが、2度続けてやられるほど、リーグ王者の打線はやさしくはなかった。
「宋は球種が少ない。真っ直ぐとスライダー、ほぼ2種類しかないわけだから。どっちかに絞っていけと。内川がよく真っ直ぐを打ってくれたよね」と同コーチ。内川は2球続けたスライダーを見逃し、1ボール1ストライクからの3球目、この日最初の真っ直ぐを一発で仕留めた。続く中村晃は、内川の同点弾の興奮が冷めやらぬ中、初球の、こちらもストレートを右翼席に運んだ。勝ち越しのソロだった。
「内川にはスライダースライダーで入ってきた中で、ストレートを一発で仕留めてくれたのは大きい。いきなり真っ直ぐに対応出来ているのは凄い。いきなり対応するのは打者としてもなかなか難しいと思う。立派ですよ」
150キロを越す宋の真っ直ぐを一振りで仕留めた内川はさすがの一言。藤本打撃コーチも脱帽だった。
これで日本シリーズ進出に王手をかけたリーグ王者ソフトバンク。1、2戦目と元気がなかった打線だったが、相手にプレッシャーをかけられる、粘っこい本来の姿が戻ってきた。あと1勝。一気に決めそうな気配すら漂ってきた。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)