「最初はマウンドに立つのが怖かった」 大阪桐蔭新エースを襲う「1」の重圧

大阪桐蔭・柿木【写真:沢井史】
大阪桐蔭・柿木【写真:沢井史】

活躍した夏の甲子園から一転、今秋苦しんだ大阪桐蔭の柿木蓮

 遡ること約3か月。夏の甲子園の3回戦・仙台育英戦で甲子園初先発のマウンドに立った柿木蓮は、強い輝きを放っていた。最速147キロをマークした威力あるストレートで打者をねじ伏せる姿に「大阪桐蔭にはこんな2年生もいたのか」と、思った人も多かったはずだ。最後は劇的なサヨナラ負けを喫したが、柿木の残した印象はあまりにも鮮烈だった。

 エースの証、背番号1をつけて迎えた今秋。秋季大阪大会2回戦・星翔戦で立った先発マウンドには、ボールが上ずり制球に苦しむ柿木の姿があった。

「調子が悪いという訳ではなかったのですが、背番号1をつけて気負いすぎていたかもしれません。1番という番号に負けていたというか……。今まで自分の中の感覚で抑えられていたのに、この秋からはそれが出来なくなっていたんです。力んだら球は抜けるし、力を抜いて投げれば公立高校の打者にでも簡単に(外野に)持っていかれるし……。

 練習が終わってからもシャドウを結構やってはいたんですけれど、特に効果がなくて。最初の頃はマウンドに立つのが怖かったですね。今までにない経験だったので、どうすればいいのか分からなかったんです」

 今夏の大阪大会では背番号16をつけ、エースの徳山壮磨に次ぐ投手としてマウンドに立った。新チーム結成後は、夏の大会で調子が上がらなかった同学年の大型左腕・横川凱が練習試合でたびたび好結果を残し、投打の柱でもある根尾昂とマウンドを分け合っていた。

 一方で、背番号1をつけた柿木が見せるマウンドでの立ち姿は、どこか寂しげだった。試合を重ねるごとに調子を上げていくはずが思うようにいかず、大会日程だけが進んでいった。

感覚取り戻す転機、“11だったらこうも気楽に投げられるのか”

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