球春到来! 2月1日は「プロ野球の元旦」プロ野球キャンプが持つ意味とは

2017年広島キャンプ地の様子【写真:荒川祐史】
2017年広島キャンプ地の様子【写真:荒川祐史】

12月1日から1月31日はプロ野球選手は「個人」

 今日2月1日からNPB12球団のプロ野球春季キャンプが始まる。そもそもキャンプとは何なのか? 簡単に説明しよう。

 プロ野球の様々な取り決めをまとめた「野球協約」には、以下の条文がある。

○第87条(参稼期間と参稼報酬)
1 球団は選手に対し、稼働期間中の参稼報酬を支払う。統一契約書に表示される参稼報酬の対象となる期間は、毎年2月1日から11月30日までの10か月間とする。

 多くのプロ野球選手は年俸を10分割して、2月から11月まで給料のような形で受け取っているが、12月1日から翌年の1月31日までは支払われない。その代わり、12月1日から翌年の1月31日の期間に、球団は選手にユニフォームを着させて試合や練習をさせることはできない(ウインターリーグなどの例外はある)。プロ野球選手はこの期間は「個人」に戻る。年末から年始にかけてプロ野球選手がいろいろなテレビ番組に出演するのは、そのためだ。

 そして2月1日、選手は再び「球団の一員」となる。球団はこの日から新しいチームとして始動する。2月1日を「プロ野球の元旦」というのはこのためだ。

 春季キャンプは、単なる「合宿」や「合同練習」ではなく、全選手、監督、コーチ、チームスタッフが参加し、ペナントレースを戦うための新しいチーム作りをする重要なプロセスなのだ。前年ドラフトで指名され、入団が決まった新人選手も、学校のスケジュールと重ならない限り参加する。

 春季キャンプは、戦後、MLBの「スプリングトレーニング」に倣ってスタートした。当初は、主として温泉地などで行われていたが、予算が乏しい球団は本拠地球場や多摩川の河川敷などで行うこともあった。しかし、1955年に巨人が温暖な宮崎県串間市でキャンプを始めてから、次第に宮崎県、高知県など西日本で多く行われるようになる。

 そして、1978年に日本ハムが沖縄県名護市で春季キャンプを実施して以降、沖縄県にキャンプ地が集中するようになる。沖縄県の2月の平均気温は15度前後。九州よりも8度前後高く、キャンプをするには最適の環境だ。そして多くの球団が集中すれば練習試合やオープン戦もしやすくなる。そういう理由もあって、近年は沖縄県にキャンプ地が一極集中する傾向が強まっている。

 今年の主要な1軍キャンプ地は以下のようになっている。

【宮崎県】
宮崎市 ソフトバンク、オリックス、巨人(1次)
日南市 西武(1次)、広島(1次)
【沖縄県】
那覇市 巨人(2次)
浦添市 ヤクルト
宜野湾市 DeNA
北谷町 中日
沖縄市 広島(2次)
宜野座村 阪神
金武町 楽天(2次)
名護市・国頭村 日本ハム(2次)
久米島町 楽天(1次)
石垣市 ロッテ
【高知県】
高知市 西武(2次)

 なお、高知県では阪神2軍、西武B組のキャンプも行われている。

 日本ハムは昨年まで39年間、海外キャンプの年を除いて沖縄県名護市の名護市営球場をキャンプ地として使用していたが、老朽化した球場を取り壊して新築することに。今季の1次キャンプは米アリゾナ州にあるアリゾナ・ダイヤモンドバックスのキャンプ施設で行われ、2次キャンプから沖縄に移動する。

 キャンプには選手、指導者、球団関係者、報道陣、関係者が多数訪れる。キャンプ地にとって全国的な知名度アップになるほか、経済効果も大きい。歴史が長いキャンプ地の中には「第2のフランチャイズ」のようになっている街も多く、シーズン中の本拠地と変わらない盛り上がりを見せている。

 2月はまだ寒いが、キャンプ地ではもう「野球シーズン」が始まっているのだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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