3本の矢、ならぬ4本の矢で… 近江が誇る左右4枚の投手陣

女房役を務めるのは新2生の有馬「ピッチャーを輝かせるのが自分の役目」

 下級生とは思えない冷静沈着さと、頭脳明快なリードを見せる。「自分とはまったく違うほど落ち着いていて、いつも先のことを考えてくれています。リードはほぼ有馬にほぼ任せています」と同学年の林が一目置く存在でもある。成績も常に上位をキープし、受け答えひとつでも大人と話しているような感覚を覚える。

「心掛けているのは、ピッチャーの特徴を生かしてバッターの裏をかくようなリードをすることです。セオリー通りにやることも大事ですが、それでは抑えられないので…。ピッチャーのその日の調子や体の状態を見て組み立てを考えますが、その日のテンションや気分の浮き沈みもあるので、そこを見ながら間合いやタイムを取りながら、ピッチャーの良さを引き出すようにしています」(有馬)。

 野球を始めた小学校1年の時はピッチャーで、学年が上がっていくにつれチーム事情などもありキャッチャーをする機会が増えた。だからピッチャーの心理も分かる。それでも捕手は決して目立ってはいけないというポリシーも持っている。「自分は脇役。ピッチャーを輝かせるのが自分の役目」。そのために必要なのは信頼関係だと自負している。

 先輩投手だろうが常に言葉を掛け続け、その日の“相棒”の様子を把握する。敬語を使いつつ、言いたいことはズバッと口にするが、それが元で信頼関係が揺らいだことはない。「確かに先輩だと気を遣ってしまいがちにはなりますが、それではキャッチャーは務まらないと思います。先輩は優しい方ばかりなので自分の言葉は受け入れていただいています。捕手の先輩がいる中で自分が背番号2をつけさせてもらっているのはありがたいこと。でもだからと言って遠慮せず、お互いに思うことを言い合ってコミュニケーションを取っていきたいです」。

 17年前の夏の甲子園で準優勝した際も3人の投手がマウンドを分け合い“3本の矢”が話題になった近江だが、今年も複数の投手で上位進出をにらむ。その中心に立つ新2年生の“太い幹”が湖国の名門の浮沈のカギを握ると言っても過言ではない。

(沢井史 / Fumi Sawai)

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