乱打戦を生み出す不思議な地方球場 語り継がれる伝説と経験者が刻む記憶
坂口の記憶「ずいぶん長く攻撃しているな、と」
その風のいたずらか、両翼90メートル、中堅120メートルという決して広いとは言えないサイズのせいなのか。この球場では球史に残る「打ち合い」が展開されている。
記憶に新しいのは10年6月7日、広島-オリックスのセ・パ交流戦。6回表、オリックスは坂口智隆(現ヤクルト)に二塁内野安打から攻撃開始。打者一巡して坂口がレフト前ヒットを放つまで10者連続安打で8点を挙げた。対する広島も粘り、結果は試合時間4時間7分、21-10でオリックスの勝利。両チーム総得点31、総安打数43はいずれも交流戦記録である。
乱打戦のきっかけを作ったとも言える坂口は、「ずいぶん長く攻撃しているな、というのは覚えています。でも1イニングに2本ヒットを打ったのは覚えていなかったですね。試合時間も長かったな(笑)」
そして福山市民球場の伝説として語り継がれているのが1998年8月9日、広島-横浜の22回戦。この試合も序盤から打ち合いとなり8回終了時点で6-6の同点。延長に突入した試合は、15回表に相手投手の暴投で1点勝ち越したのをきっかけに一挙8得点。6時間13分、14-6で横浜が結果的に圧勝した。
試合終了は当然、深夜に及んだため球場からの交通手段も終了。帰宅できなかったファンが球場周辺で一夜を過ごしたという逸話も残っている。