“流れ”の奪い合い制した明徳義塾 逆転サヨナラ引き寄せたポイントとは

沖縄・興南高校、京都大学などで監督を務めた比屋根吉信氏
沖縄・興南高校、京都大学などで監督を務めた比屋根吉信氏

大谷を1番で起用した中央学院

 この8回裏に挙げた1点によって中央学院の大谷は大きなプレッシャーを背負うことになる。9回、簡単に2死を奪いながらも、その後は勝ちを急いでしまったのか勝負球が高めに浮いてしまう結果となった。谷合に打たれた一発も3球連続で直球勝負し、高めに浮いたボールでした。

 中央学院はこれまで4番だった大谷を1番で起用した。大会ナンバーワン右腕ともいえる明徳義塾の市川とは秋の明治神宮でも戦っていたからこそ、中央学院の相馬監督は早い段階でリードしたいと考えたはず。大谷で走者を返すのではなく、走者・大谷を返すため、多くの打席が回る1番で起用したのでしょう。

 敗れはしましたが、中央学院の大谷も素晴らしい素質をもった投手でした。ただ、腕の振りはいいですが、まだ下半身はうまく使えていない。下半身の使い方がうまくいけば、制球力も上がり、スピードも140キロ以上のボールを投げられるようになるでしょう。

 今大会屈指の好ゲームは流れの奪い合いとなり、最後は試合巧者の明徳義塾が流れを奪い返した形になりました。監督50勝を素晴らしい好ゲームで飾り、記憶に残る一戦になったと思います。

〇比屋根吉信(ひやね・よしのぶ)  
1951年9月19日、兵庫県尼崎市出身。66歳。報徳学園高から大阪体育大に進学。卒業後は西濃運輸で日本選手権にも出場。1976年に沖縄・興南高の監督に就任。仲田幸司、デニー友利ら多くのプロ野球選手を輩出。監督生活10年間で春夏通算6度、甲子園に導き1980年の選手権大会ではベスト8入りするなど同校を強豪校に作り上げた。その後は社会人野球・阿部企業、熊本・有明高の監督を務める。2010年から12年まで関西学生野球リーグの京都大学の監督を務め、田中英祐(元ロッテ)を育てた。

(Full-Count編集部)

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