松山聖陵・土居の夏に向けた課題 未完の大器になりがちな長身投手の育成法
身長190センチの松山聖陵・土居は6回途中で降板
第90回記念選抜高校野球は28日、大会6日目を迎え、近江(滋賀)が8-5で春初出場の松山聖陵(愛媛)を下した。今大会注目の好投手・松山聖陵の土居豪人は6回途中で降板し5回2/3、11安打8失点で敗戦投手となった。190センチの長身右腕の夏に向けた課題を沖縄・興南高校で春夏通算6度の甲子園出場を果たし、京都大学などでも監督を務めた比屋根吉信氏(66)に解説してもらった。
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松山聖陵の土居は190センチの長身を生かした、角度ある直球が武器。スピードこそ140キロ前半だったが随所で光ものがあった。ただ、やはりまだ体が出来ておらず、下半身が弱くテークバックも小さかった。体の割にこじんまりとした投球だった。
これだけの大型投手が高校時代に完成することは非常に難しい。私も興南高校の監督時代に友利結(デニー友利)を指導する機会があった。1年生の時は遠投だけをさせて、走り込み。2年生の時は球種はストレートだけと、制限をかけて成長を見守った。
180センチを越える投手は辛抱強く体力をつけることが大事だ。上(プロ)のレベルを目指す投手なら高校生の段階で下半身の使い方、体重移動などを体に染み込ませてあげることが必要になる。敗れはしたが松山聖陵の土居も夏に向けて課題がはっきりしたと思う。
下半身に粘りが出れば、そこにタメが生まれ140キロ前半のストレートも夏場までには150キロを目指せる位置までくる。夏までに遠投や、内野ノックに入り、三遊間の打球を受けスローする練習などをこなせば自然と体は下半身で投げることを覚える。素晴らしい素材だけに、今後の成長が楽しみな投手だ。
一方、近江は各打者が鋭いスイングでゴロを徹底した打撃を見せ土居を攻略した。長身の投手が相手となると、どうしても打者は顎が上がり、下からバットがでる傾向になるが近江打線は違った。厳しいコースに対してもバットを上から出し、強い打球でヒットコースに飛ばした。13安打中12本が単打だったのを見ればその徹底ぶりがわかる。
投手陣も左の2枚がテンポよく投げ込んだ。林、金城とも体は小さいがしっかりと腕をふり小気味よく投げるため守備陣も守りのテンポが生まれた。守りから攻撃のリズムを作った近江が試合巧者だったといえるだろう。
〇比屋根吉信 (ひやね・よしのぶ)
1951年9月19日、兵庫県尼崎市出身。66歳。報徳学園高から大阪体育大に進学。卒業後は西濃運輸で日本選手権にも出場。1976年に沖縄・興南高の監督に就任。仲田幸司、デニー友利ら多くのプロ野球選手を輩出。監督生活10年間で春夏通算6度、甲子園に導き1980年の選手権大会ではベスト8入りするなど同校を強豪校に作り上げた。その後は社会人野球・阿部企業、熊本・有明高の監督を務める。2010年から12年まで関西学生野球リーグの京都大学の監督を務め、田中英祐(元ロッテ)を育てた。
(Full-Count編集部)