大学生の閃きがパ・リーグを救う!? 「ビジネスアイディアドラフト会議」

パ・リーグ6球団とPLMが実施した合同イベント「ビジネスアイディアドラフト会議」の様子【写真:武山智史】
パ・リーグ6球団とPLMが実施した合同イベント「ビジネスアイディアドラフト会議」の様子【写真:武山智史】

大学生が観客動員アップのための企画をプレゼン

 抽選箱が置かれた壇上で各球団の代表者がクジを引き、その結果を多くの人々がじっと見守る…。2月の渋谷でドラフト会議さながらの光景が見られたのは、パ・リーグ6球団とPLM(パシフィックリーグマーケティング株式会社)が実施した合同イベント「PACIFIC LEAGUE BUSINESS CAMP 2018」での一場面だった。昼、午後の2回で行われたこの「仕事研究・体験イベント」の中、午後の部で行われたのが大学生による観客動員アップのための企画をプレゼンする「ビジネスアイディアドラフト会議」だ。

 この「ビジネスアイディアドラフト会議」のテーマとなったのは「パ・リーグファン倍増化計画!」。6人の大学生が自ら発案したアイディアを各球団担当者の前でプレゼン。その後、各球団担当者が一番良かったアイディアを出した大学生をドラフト会議方式で指名していき、複数の球団が競合した場合、クジ引きで交渉権獲得を決めるというシステムだ。6人の“選手”は以下のようなアイディアを発表した。

〇岡田さくらさん(大学3年生)
「友達誘って得しちゃおう!! 初心者も安心ペアチケット」

 野球観戦初心者の友人を誘って楽しんでもらうのと同時に、誘った本人も得するシステムのペアチケットを5000円(2名分)で販売。「応援の仕方や野球のルールが分からない」という野球観戦初心者が楽しめるように、チケットにユニホームと球団応援グッズを付ける。一方、球団側は野球観戦の予習としてオリジナル観戦方法のVTR動画を作成。簡単なルール説明や応援方法、野球のすごいプレーを織り込み、野球観戦の面白さを伝える。誘った側はオプションとして次回観戦用の外野自由席チケットが入手できる特典がある。

〇信澤克彰さん(大学3年生)
「パ・リーグ グルメ」

 キャッチコピーは「『世界一おいしいリーグ』への挑戦」。スマートフォンの「パ・リーグアプリ」で各球場のグルメ情報を一元化し、球場グルメのレビューや評価をする「ぐるナビ」や「食べログ」のようなグルメサイトを展開する。評価制度の採用によって各球団のサービス向上を目指すのも目的の一つ。また、アプリのチェックイン機能を使い、試合観戦中にスマートフォンから商品を注文し座席に届けてもらう。

 球団側にとっては「このファンはどのタイミングで、何を買ったのか」など顧客データを回収することができ、客層に適したマーケティングが可能となる。プロモーションとして「球場グルメドラフト会議」の開催や、初回利用や招待の際にはクーポンを発行する。最終的にはNFL、プレミアリーグと肩を並べ「世界一おいしいリーグ」として海外から注目を集めることを目指す。

〇村上まありさん(大学3年生)
「パ・リーグのクールジャパン戦略」

 キャッチコピーは「増加する訪日外国人を取り込め」。増加する訪日外国人を球場に呼び込み、日本のスポーツ文化に触れてもらう。今回は野球の盛んな台湾をターゲットに設定。訪日台湾人の1泊あたりの支出額が約12000円から考え、特別シートに球場ツアー、応援グッズなどが付いた野球観戦セットを10000円で販売。台湾の場合、個人ブログで旅行情報を入手することが多いため、プロ野球観戦をSNSにアップするとステッカーなどのプレゼントサービスを行う。

〇葉凌豪さん(大学3年生)
「時差チケット」

 企画のヒントとなったのは東京メトロで販売している時差回数券。試合開始前まで販売していなかった席を、試合開始後の一定の時間から割引チケットとして販売する。球団では既に楽天の「おばんですチケット」、千葉ロッテの「711チケット」と類似のサービスがあるが、これをパ・リーグ全体で実施する。時差チケットの値段は1ドリンク付きで2000円。時差チケットを販売することで、野球観戦は長時間でなくても楽しめるものであり、より多くのお客様に入場できるようにする。

〇宮腰諒志さん(大学2年生)
「【球団名】仲間入りチケット」

 各球団の地域密着施策や球場への高いリピート率を生かし、その地域に新しく来た18歳から29歳の転入者に平日限定の無料観戦チケットをプレゼント。空席が多い平日ナイターの来場者を増やすと同時に、野球に興味の無かった人を取り込む。また、仲間入りチケット1枚で4人以上の来場で、全員が特典ファンサービスを受けることができる。

〇灰原万由さん(中央大学2年生)
「化粧品メーカーとコラボ! パ・リーグ限定化粧品」

 化粧品メーカーとコラボレーションを行い、球場へ足を運ぶ女性に野球の魅力を伝える。女性の来場を促進するため、球場のみの限定販売でアイシャドウの限定色、ファンデーションの限定ケースと「限定」がテーマ。パ・リーグ各球団や化粧品メーカーの各種SNSで情報発信を行い、化粧品メーカーと契約しているタレントが限定化粧品を使用するといったプロモーションを展開する。

 6人のプレゼンの後、審議を経ていよいよ各球団の指名選手が発表された。ステージ中央には抽選箱が置かれ、本物のドラフト会議のような雰囲気が会場に漂い始める。そして、司会を務めるフリーアナウンサーの上野晃氏によって各球団の「指名選手」が発表されていく。

日本ハム 宮腰諒志さん

楽天 葉凌豪さん

西武 信澤克彰さん

ロッテ 信澤克彰さん

オリックス 宮腰諒志さん

ソフトバンク 信澤克彰さん

 信澤さんに3球団、宮腰さんが2球団の競合となり、複数の指名が決まるたびに場内からは「オー!」という歓声が上がる。本家ドラフト会議のように、球団担当者は抽選箱から封筒を取り出し、上野氏の「どうぞ!」の声で開封する…。抽選の結果、オリックスが宮腰さん、ロッテが信澤さんとの「交渉権」を獲得。この結果、楽天・葉さん、ロッテ・信澤さん、オリックス・宮腰さんの指名が決定した。

楽天から葉さんには「球団幹部面接シード権」。千葉ロッテから信澤さんには「球団役員面接シード権」。オリックスから宮腰さんには「役員面接シード権パス(3年間有効)」とビジネスキャンプならではの副賞が贈られた。

 信澤さんは「プレゼンに自信がなく、自分の伝えたいことがうまく伝わったのかなと思っていました。3球団も指名して頂いたのでうれしかったです。球団の方には色々とお聞きしたいことがあります」とコメント。自らの企画については「ユーザーがそれを使って本当にうれしいのか、球団やショップにとって良いのかを注意しながらプレゼンを作りました。実際に球場に足を運んでリサーチし、スポーツだけでなく他の業界で使われているサービスなども調査しました」と振り返った。

 会の最後、ステージ上に立ったPLM代表取締役の根岸友喜氏は「ビジネスアイディアドラフト会議」の意図をこう説明した。

「今日、6人の大学生が代表してプレゼンテーションをしてくれましたが、すべて自分で考えました。実は球団で働いている営業、マーケティングに携わっている人たちは、こういった企画を常に考えています。今日はドラフト会議の体裁でしたが社内を通す、それで初めてファンやお客様に自分たちの企画やコンテンツを届ける。これを毎日行っています。ここにいらっしゃる中で『自分の方が良いプランができる』『このプランはここをもっと良くした方がいい』と思って聞いていた方、すごくプロ野球界に向いていると思います」

 パ・リーグに、もっとイノベーターを。斬新なアイディアでパ・リーグを活性化する未来の担い手が多く現れると、さらに面白いパ・リーグ、そしてプロ野球を見ることができるかもしれない。

(「パ・リーグ インサイト」武山智史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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