スポーツ業界の人材難に一石か…パ球団と地元大学が進める新たな取り組み
ソフトバンクが九州産業大学と人材育成タッグ
スポーツの世界には人材が圧倒的に足りていない。これはスポーツ業界に限ったことではないかもしれないが、現場で働くスタッフなどからよく耳にする言葉だ。
人材不足から来る日々の運営に追われる現状のスタッフの多忙さ。学生や球団で働きたいと希望する者たちを生かすことがまだまだ難しい現状はあるが、パシフィック・リーグでは球団単位で積極的に人材育成に取り組む球団もある。
2018年度4月から福岡ソフトバンクホークスは地元・九州産業大学と共に人材育成に取り組むプロジェクトを開始した。新学部として開設したばかりの人間科学部スポーツ健康科学科では今後、球団と球界を支える人材育成を行うため、福岡ソフトバンクホークスで働くスタッフたちによるプロ野球ビジネスの現状を学ぶスポーツビジネス講座が開かれることとなった。教室での授業だけではなく、実際にヤフオクドーム、タマスタ筑後などの施設への“課外授業”も存在する。
そして、大学の特性が生かされた多様なスポーツ人材の育成にも取り組んでいく。ビジネスの人材だけではなく、スポーツフォトグラファーを目指す九州産業大学の芸術部の学生たちには、試合撮影の体験や関連する実務を経験する機会が与えられる。大学が誇る豊富な“人材”を対象に球団が研修の場を提供する。
九州産業大学の福田拓哉准教授は九州・福岡にプロスポーツが集積されているにもかかわらず、スポーツビジネスを柱とした教育を行っている大学が存在していなかったことを問題視。この状況を変えようと、新学部開設のタイミングで福岡ソフトバンクホークスに相談したことから、今回の取り組みは実現に向けて動き出した。「産学一如」を建学の理想とする九州産業大学として、ホークスはこれに適した存在だった。
地域密着を大切にしたプロ野球ならではの取り組みは、2013年に楽天イーグルスが東北大学と共に「スポーツ経営実践論」の講座を先駆者的な形で行っている。2015年からは福島大学とも同様な取り組みを行い、生徒たちは現場でのチケットマーケティングやゲームオペレーションを体験する実践なども与えられた。
実際に楽天イーグルス関係者に話を聞いたところ、この講義に参加した学生からチームスタッフになった者はまだいないようだ。球団では2015年より新卒採用を始めたが、まだ受講学生の入学には至っていないものの、インターンシップや新卒エントリーで入社を勝ち取った者は存在する。今後、講座を受講した学生が入社まで駆け上がっていくストーリーが生まれれば、今後の可能性をさらに大きなものへと広げていくだろう。