これだけ苦しんでいるのは不思議? ホークス武田の不振の要因を数字で探る
これだけ苦しんでいるのが不思議といえるような内容
ここからはセイバーメトリクスからいったん離れ、より平易な指標について見ていきたい。まずは9イニングスあたりで何本のホームランを浴びる計算となるかを示す、「被本塁打率」について確認していくことにする。
武田は昨年も13試合(71イニング)で10本塁打を浴び、被本塁打率1.268という数字を残すなど”一発病”の兆候が見え隠れしていた。そして、今季も17試合で10本塁打を喫して被本塁打率は0.909と、こちらは改善されているが、昨季は13試合で6勝4敗、防御率3.68と先発投手として十分な成績を残していただけに、失点が増えている理由は他にもあると考えるのが妥当だろう。
そこで、本塁打ではなく安打を打たれた割合を示す「被打率」も見ていきたい。武田の今季の被打率は.234と、優秀とされる2割台前半の範疇に収まっている。また、四球を与えた割合を示す「与四球率」も2.54と、昨季の4.18から大幅に改善されている。昨季は5つ与えた死球も今季は1となっており、ランナーを出す割合はむしろ減少しているようだ。
最後に「QS率」を確認していきたい。武田は今季17試合に先発したが、そのうちQSを達成できたのは6度のみ。QS率は35.3%で、3回に1回しか試合を作れていないという計算になってしまう。武田がわずか3勝にとどまっている要因のひとつは、この数値にあると言えそうだ。
以上のように、LOB%やQS率の悪さこそ目立つものの、総合的な投球内容自体は悲観するほど悪くはないという数値が出ている。運に恵まれていない点が成績の悪化につながっている面もありそうだが、セイバーメトリクスの観点からの評価としてはこれだけ苦しんでいるのが不思議といえるような内容となっている。
1年目から1軍のマウンドを踏み、若くして常勝軍団の主戦投手へと成長。順風満帆なプロ野球人生を送っていた武田が突如としてはまってしまった落とし穴は、今後のさらなる成長を促す触媒となるか。投球内容自体はそう悪くないという分析結果が残っているだけに、再び1軍の舞台で勇躍を見せてくれる可能性も決して低くはないはずだ。武田はプロ入り後初めてとなる大きな挫折を乗り越え、この経験を糧により一回り大きくなった姿をこれから披露してくれるだろうか。