元メジャー右腕が提言する、これからの高校野球「選手が燃え尽きないように」
「選手の将来を考えながら戦える場になっていくといい」
プロスカウトから注目を集める吉田と柿木だが、現時点での投手としての完成度を比較すると「吉田君の方が上ですね」と話す。それというのも「柿木君はまとまり過ぎている印象がありますね」という。
「柿木君は全ての球種がアベレージより少し上。何かが飛び抜けているわけではなく、真っ直ぐ、スライダー、チェンジアップ、フォークが全て同じくらいの出来なんですね。もちろん、プロ入りを表明すればドラフト上位で指名されるでしょうが、真っ直ぐと変化球はともに1つ1つの精度を上げる必要がある。逆に、まだ伸びる可能性があるということですね。
吉田君はプロ入りしても即戦力として十分に通用するでしょう。大学に進学するよりも、田中(将大)投手や藤浪(晋太郎)投手のようにプロの世界で経験を積んでいく方がいいかもしれません。彼のストレートの質は本当にいいですから。完成度の高い投手ですね」
今大会を通じて藪氏を驚かせたのは、高校野球のレベルの高さだ。藪氏が高校3年時に開催されたのは、第68回大会だった。それから32年。「今の選手の方が間違いなく高いレベルの技術を持っています」と断言する。
「今大会では右は吉田君、左だったら河村君(日大三)や林君(近江)がよかったですね。高校生でここまで投げられるのは、本当に驚きです。アメリカでは大学生でこのレベルに達すればいいという考え。日本の方が早熟ですが、小さい頃から1つのスポーツに専念して、根を詰めて取り組んでいる表れかもしれません。
僕は甲子園に出場できず、その悔しさがあったから大学、社会人、プロと野球をやり続けた。ただ、僕の周りには甲子園に出場した後、バーンアウトしてしまって、野球を続けなかった人たちもいます。それを考えると、甲子園に出場した選手が燃え尽きずに野球を続けるにはどうしたらいいか、考えた方がいいでしょう。甲子園は最終的な目標ではなく、プロへの通過点の1つ。選手の将来を考えながら戦える場になっていくと、より発展していくのではないかと思います」
優勝旗が新しくなり、次の100年に向けて新たなスタートを切った夏の甲子園。選手のレベルが高くなることに合わせ、野球に関わる大人たちの意識も高く変化させていくことが求められているのかもしれない。
(Full-Count編集部)