大阪桐蔭と金足農の勝敗を分けた守備力の大きな差…データで見る高校野球
両校で大きな差が生まれた守備力
9番・柿木選手を除けば、5回までに大阪桐蔭の放ったゴロは4回裏ノーアウトから7番・山田選手がセカンドに放ったゴロのみ。しかし、このゴロはセカンドの送球ミスによってアウトにできず、ランナーを残してしまいます。これが金足農業4回裏の3失点につながってしまうのです。今大会、金足農業は6試合すべてで失策を記録、総計8個のエラーを出しました。ちなみに大阪桐蔭は6試合で失策4、無失策試合4と堅守を示しています。
さらに、大阪桐蔭と金足農業に大きな差がある指標がありました。グラウンド上に飛んできた打球のうち野手がアウトにした割合を示すDER(守備効率:Defensive Efficiency Rating)というものです。
DERは(打席数―被安打―与四死球―奪三振―失策)÷(打席数―被本塁打―与四死球―奪三振)で計算されます。
○ベスト8に残ったチームのDER
日大三 DER 77.7% 失策2
報徳学園 DER 76.8% 失策2
浦和学院 DER 72.2% 失策3
大阪桐蔭 DER 71.7% 失策4
済美 DER 67.9% 失策5
下関国際 DER 67.6% 失策4
近江 DER 66.7% 失策4
金足農業 DER 58.2% 失策8
この指標は投手が打たれる打球の質にも依存するので、これが守備力すべてを示す指標ではないことはご承知おき願いたいのですが、守備範囲の広さや打球処理など、失策数には表れない守備の優劣がこの指標に大きな影響を与えていることは確かです。金足農業のDERはベスト8の中でも群を抜いて低いことがわかります。DER58.2%ということは吉田投手の打たれた打球の4割以上はヒットにされているということです。平均で打率は3割ですから、これはかなり辛い状況と言わざるを得ませんし、これが1試合平均146を超える投球数の要因ともなっていると考えられます。
それに対し、大阪桐蔭のDERは71.7%と平均より高く、決勝でも大差のついた中、無失策で柿木投手をバックアップしています。この守備力の差もスコアに反映されたのかもしれません。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。