“本塁打アーティスト”の魅力に迫る 西武・中村が持つ「本塁打を打てる感覚」

変わらぬ中村の打撃ベース、構えとタイミング

 中村の本塁打への意識はプロ入りしてから一貫している。高校時代から強打者として知れ渡っていたが、その才能が大きく開花したのは08年。この年に46本塁打を放った。4番に定着した翌09年は48本塁打。日本を代表する長距離打者への道を歩み始めた。

「すべてそうだと思うけど、特に本塁打に関しては過去の実績など関係ない。打てる、という感覚を持てることが大事。08年に初めて40本超えた時がそうだった。軽く打ったのにフェンスを越える。こんな感覚でいくんだ、と思えた。本塁打を打つ感覚というのは変わらない。

 それは今も同じことが言える。やっぱり身体の変化によって構え方やスイングなどは変わってくる。2軍でやったり、いろいろあって、また異なった形になっているかもしれない。でも、本塁打を打つ、という部分に関しては変わらない。まぁ、それは本当に感覚の部分だから、言葉にするのは難しいけど」

「3割打てば一流」と言われる打撃は本当に難しい。日によって球を捉える感覚も変わるだろう。それに対して素早く順応することが、プロで結果を残す秘訣でもあるだろう。しかし、中村はベースの部分については変わっていないと言う。大事にしているのは今も昔も、構えとタイミングである。

「とにかくリラックスして力を抜いて構えることが重要。本塁打を打った時でもしっかり捉えられれば、力を入れなくとも飛んでいく。変な力が入っていると打ち損じにもつながる。とにかく余分な力を抜いて、リラックスして構えることが重要。

 本塁打を打てる感覚というかな、そういうのをつかんだのもそうだった。故障をして引き手の左手を使えない時に本塁打を打った。この時は右手1本で押し込むような感覚。これでも本塁打を打てるんだって」

 プロ入り後も、構えた際にグリップの位置が高い時あれば、極端に低い時もあった。それも同じ考え方による。

「その時にリラックスできる場所で構えたい。もう感覚の世界ですね。昨日と同じ場所で構えても、なんとなく窮屈で力が入っている時もある。構えた時に、楽に感じてリラックスできる場所で構えていますね」

 もう1つはタイミングである、中村というと、以前は「ミートポイントを前にしてから飛距離が出るようになった」と騒がれた時期があった。しかし、本人にはそういう意識はまったくなかったという。

「タイミングも同様で、リラックスした状態からしっかりと捉えられるか、だけを考えている。相手投手はいろいろな球を投げてタイミングを外そうとする。だからポイントが多少、変わるのは当然。その都度しっかり捉えられればいい。そのためにベンチやネクストで相手投手をしっかり見ている。

 もちろんタイミングを合わせるために準備もしっかりやった。ポイントが前でも後ろでも、どういう感じで捉えられるのか実際に打ってみた。例えば、秋季練習で泳ぐくらいのポイントで打ち続けたりもした。いろいろな引き出しを増やしつつ、その日、打席で自分に合ったタイミングで打つ」

「60本は無理ですよ。でも、本塁打にはこだわっていきますよ」

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