打者は柳田、投手は二木…セイバー目線で選出する8月パ月間MVP

救援投手が大健闘、千賀と二木の好投が光る

○8月月間MVP パ・リーグ投手部門

二木康太(ロッテ)
4登板 1勝3敗 防御率2.35 
FIP 2.52 RSAA 6.29 WHIP 0.97 QS率80% K/BB 3.6

 今月は救援投手陣で特筆すべき成績が目立ちました。

山田修義
18登板 投球回12.2 1勝1敗9H 防御率3.55 被打率.156 奪三振率11.37

宮西尚生
13登板 投球回11.2 0勝1敗11H 防御率0.00 被打率.214 奪三振率10.03

ヒース
13登板 投球回13 0勝0敗8S4H 防御率0.00 被打率.114 奪三振率15.23

山岡泰輔
9登板(先発3)投球回26.2 3勝0敗4H 防御率1.35 被打率.224 奪三振率7.76

 山田は8月3日になって初めての1軍登録。左のワンポイントとして起用され、16日までの14日間で11試合に登板。その間無失点を継続し、1勝7ホールドを達成しました。18日に初失点、19日は4失点で初黒星とソフトバンク打線には捕まりましたが、その後も起用され続け、稲尾和久、益田直也、フランスアに並ぶ月間18試合登板となりました。

 山田と同じく左のセットアッパーとして長年活躍してきた宮西も8月は13登板とフル稼働。8月3日は1失点で黒星がつきましたが、それ以降は無失点で1勝11ホールドを達成。自責点は0のため月間防御率0.00を記録しています。候補者名簿にはありませんでしたが、有力候補になり得るとして紹介しました。

 ヒースは西武救援投手陣再建の屋台骨となりました。13試合に登板しすべて無失点、4ホールド8セーブを記録しました。なおヒースが5月に登録されてからの月間防御率は次の通りです。

5月 4.50
6月 0.00
7月 4.15
8月 0.00

 隔月で調子の波が来ているようで、9月1日のオリックス戦には9回裏2点リードの場面から2連打の後、中島宏之にサヨナラ3ランを浴びています。西武優勝戦線に不安を残す形となりました。

 山岡泰輔は5月以降、先発として8連敗と結果を残せず、8月から中継ぎに回ります。山岡はその役目を4連続ホールドという結果でしっかり担い、金子千尋の代役として急遽先発登板となった15日の西武戦においては6回2失点のQS達成で4月22日以来の3勝目をマーク。その後は先発ローテに復帰し、月間3勝と八面六臂の活躍で、オリックス投手陣の救世主となりました。

 では、先発投手陣で有力な候補の成績をみてみましょう。

千賀滉大 
4登板 投球回31.1 4勝0敗 防御率0.86 被打率.176 奪三振率10.63 完封1 

二木康太
5登板 投球回38.1 1勝3敗 防御率2.35 被打率.201 奪三振率8.45 完投2(完封1)

 千賀は先発で4勝、うち完封1つ、奪三振37はリーグ1位となれば、ソフトバンク月間首位とも相まってNPB公式の月間MVPの最有力候補と言えるでしょう。二木は8月31日の7失点降板で印象は悪くなったことでしょう。
 
 では、セイバーメトリクスによる評価ではどうなるでしょうか。

二木康太
FIP 2.52 被本塁打1 WHIP0.97 QS率80% K/BB 3.6 RSAA 6.29

千賀滉大
FIP 2.23 被本塁打1 WHIP0.93 QS率100% K/BB 3.7 RSAA 6.16

ヒース
FIP 0.43 被本塁打0 WHIP0.46 K/BB 22.0 RSAA 5.15

宮西尚生
FIP 1.66 被本塁打0 WHIP1.03 K/BB 4.33 RSAA 3.02

山田修義
FIP 2.57 被本塁打1 WHIP0.87 K/BB 4.00 RSAA 2.01

山岡泰輔
FIP 3.61 被本塁打2 WHIP1.16 K/BB 2.56 RSAA 1.15

 RSAA(Runs Saved Above Average)とは、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標で、(リーグ平均FIP?選手個人のFIP)×投球回数/9で算出します。

 RSAAはイニング数にも依存するので、救援投手の数値は先発に比べ抑えられる傾向にあるのですが、ヒースの5.15は救援投手としてはかなり高い部類の数値で、先発投手と比較しても遜色ない記録です。

 ただ2人の先発がRSAA6点台とそれを超えています。各指標では千賀の方が二木を上回っているのですが、どれも僅差。ここはRSAA上位だった二木を推挙します。

 ちなみに今月の二木は2つの意味で「援護」がありませんでした。まず援護率は千賀が6.68、二木が1.38と打線の援護に恵まれず、2完投も報われず今月1勝止まりでした。

 また、グラウンドに飛んだ打球をどれだけの割合でアウトにできたかを示すDERの月間指標を見ると、ソフトバンクが.728だったのに対し、ロッテは.698と大きく差が開いています。DERは投手が打たれる打球の質にも依存する数値ですが、守備範囲の広さや打球処理の巧拙にも強く依存する数値でもあります。守備陣の援護にも差が出た8月だったのではないでしょうか。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。コミュニティサイト「鳥越規央のデータ野球部」を開設。
https://butaiura.fan/community/torigoenorio/

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY