変化を恐れず、逆境を楽しむ オリックス球団社長・湊通夫さん

経験則を忘れ、常にチャレンジする姿勢

 企画事業部長、事業本部長を経て、2013年には京セラドームを運営する株式会社大阪シティドームの社長に就任。そして、今年1月からはオリックス・バファローズの球団社長を兼任することになった。球団社長とは、どんな役割を担う立場なのか。

「球団によって詳細は異なるかもしれませんが、基本的に球団社長は経営のトップなので、ビジネスラインの数字の状況を把握して、適切にディレクションすることがおもな仕事です。チームまわりのほうは、戦術などには口を出しませんが、チームマネジメントの部分で情報共有して補正していくことはあります。ショックアブソーバー的な立ち位置ですね」

 球場を360度囲む観客の“最大公約数”をいかに増やすか。その課題には社長となった今でも向き合っている。前職時代の業績は成功体験として糧になっているが、社長である以上冷静な視点も忘れない。

「現場を知っていることは私の強みでもあるのですが、経験則があまりに働き過ぎてしまうと、かえって弱みになってしまう。経験則のせいで失敗を恐れて、新しいチャレンジをしなくなることだけは避けたい。そういう意味では、過去の失敗や成功に囚われることなく、常に頭をリセットしておかないといけません。5年前に失敗したイベントであっても、時代やベクトルが変われば成功するかもしれないですから」

 頭の中を新鮮な状態に保つためにも、新しい感覚や若い人たちのアイデアが必要だという湊社長。だからこそ、球団職員には遊び感覚や視野の広さを求めているという。

「どう集客に結びつけるかというセンスはもちろん必要ですが、根本的に我々の仕事で大事なのは『好きであること』や『楽しむこと』だと思っています。ただ、実はそれが難しいことでもあるんですよ。ずっと同じことを淡々とやっているほうが安定するし、失敗もしないですからね。でも、それだとマンネリ化する。とにかく我々の仕事はチャレンジすることです」

 最近は中途採用で、他業種からの転職者も数多く受け入れている。人材を募集する際には、経歴などはほとんど重視しない。大事なのはその人の人となりと軸があるか。

「なぜオリックス・バファローズに入りたいのかが大事なので、過去にどんな仕事をしてきたかは関係なく、フラットな視点で見ています。つまり、情熱があればいくらでも球団で働くチャンスはあるということ。面接では逆に質問をしてもらうこともあるのですが、その質問内容も面接官としては興味深いところです」

楽しさを提供しつづけるという使命

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