黄金期よりも「打線は上」 10年ぶりVの西武、防御率最下位でも攻めて頂点

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】
西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

191本塁打771得点はリーグトップ、チーム防御率はリーグで唯一4点台

 悲願のリーグ優勝に、ついに手が届いた。優勝へのマジックを1としていた西武は30日、敵地・札幌ドームでの日本ハム戦に敗れたものの、この試合中に2位のソフトバンクがロッテに敗戦。前回優勝した2008年と同じ“負けてV”となったが、10年ぶり22度目の優勝を飾った。

 今季の西武を象徴するラストスパートだった。優勝へと大きく近づいた15日から行われた本拠地でのソフトバンクとの直接対決3連戦。初戦は初回にいきなり3点を奪うと、3本塁打11得点で圧勝。2戦目も山川の2ランなどで初回に4点を奪って押し切ると、3戦目は栗山の満塁弾で初回に4得点。3試合連続で初回に大量点を奪って圧倒した。

 そのまま勝ち続けて再びライバルと顔を合わせた、27日からの3連戦。初戦は森の先制3ランに始まり、山川ソロ、そして土壇場での秋山の逆転3ラン。2戦目は山川の3ランで2回に先制し、中村の2ランが決勝弾となった。3戦目こそ1点に終わって敗れたものの、24日の楽天戦からの4試合で奪った20点が全て本塁打だった。

 チーム打率.273は12球団単独トップ。771得点はリーグ2位のソフトバンクに130点もの差をつけてダントツだ。チーム本塁打数も、本拠地にホームランテラスのあるソフトバンクと同じ191本。チーム防御率はリーグ唯一の4点台となる4.27と苦しんだが、弱点である投手力を、ほとんどの部門でリーグトップに立つ強力打線が補った。

 今季、4番を務め上げた山川穂高は現在46本塁打121打点で2冠王に立ち、3番の浅村栄斗も30本塁打で山川とほぼ同じ120打点。リードオフマンの秋山翔吾ですら、23本塁打80打点を叩き出している。さらにベテランの中村剛也は夏場から本塁打を量産し、94試合で28本塁打73打点。外崎修汰も18本塁打、主に捕手として起用された森友哉も16本塁打を放ち、6人が2桁本塁打を放った。

 大量ビハインドをひっくり返したのも、一度や二度ならず。他球団にとっては試合終了まで気の抜けない破壊力満点の打線が最大の売りだった。優勝決定後の会見で、辻発彦監督は「数字的に見れば、打線大爆発」とする一方で「個々に特徴を持った、キャラクターに富んだ選手たちがいて。コーチも含めて1点を大事に取って、1点を大事に守り抜こうという戦いが理想だと取り組んできた。劣勢になっても最後まで諦めずに勝利に向けて頑張ってくれました」と語った。

 辻発彦監督といえば、広岡監督、森監督のもとで5連覇を達成した1990年から94年の中心選手だ。当時も平野、秋山、清原、デストラーデ、石毛らを擁して打線も強力だったが、当時との比較を求められた指揮官は「ホームランは打てますし、走れますし、迫力というところでは打線は上じゃないでしょうか。結果的に投手力は厳しい厳しいと言われてきましたけど、それがチーム力。打線と投手力でうまく乗り切ったというところだと思います」。圧倒的な打力を全面に押し出した“総合力”で掴み取った栄冠だった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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