いずれはデータのプロを球団へ… パの取り組みが野球界に新たな潮流をもたらす
エンジニアリング部門、コンサルティング部門に分かれ球団ビジネスの施策をプレゼン
〇北爪匡さん、小柳優太さん「ようこそ、おっさん」
ファンクラブのデータ分析から女性ファンの消費が現在の球団経営を支えている。一方で女性ファンはデータのばらつきが多い反面、男性ファンはばらつきが少ない。そのため男性ファンがマーケティングし易いのではと仮説を立てる。また、女性ファンの多い試合は負けが多い、男性ファンは20代で一度離脱するが再び戻ってくるデータから40歳以上の「おっさん」をターゲットにする。「おっさん」を招き入れるために「おっさんデー」を作る、「おっさん」のためのオープンデータ対応が必要とされる。
〇中川優さん「ポイントは人気のある野手」
ファンクラブ会員の試合観戦回数が増えれば、チームの売り上げが上がると仮定。メインターゲット層を設定し、月別の観戦者数とチーム勝率を比較する。そこから野手の試合出場が観戦者数の増減に影響していることがデータから判明した。継続的に試合観戦に来てもらうことを考えると、野手の人気選手をドラフトなどで獲得すれば観客動員アップにつながるのではないか。
審査員を務めたPLM代表取締役の根岸友喜氏は、北爪さんと小柳さんのプレゼンを受け「『おっさんのためのデータ講座』をやります」と今後の新たなイベントを示唆。中川さんのプレゼンには「これが証明されればマーケティングのデータをベースボールオペレーションにつなげられるのでは。気付きを頂きました」とビジネス側からの目線でコメントした。審査の結果、北爪さん、小柳さんがコンサルティング部門の最優秀賞を受賞した。2人の本職は新聞記者であり、北爪さんはその参加理由をこう明かす。
「実は半分取材でもあり、『ハッカソンにチャレンジしてきた』というドキュメンタリータッチの記事を考えていたんです。『案の定、惨敗しました』と想定していましたが、『勝っちゃった』に見出しが変わりました(笑)」
一方、エンジニアリング部門では「データが膨大だったため、どのデータを使うかという『捨てる勇気』が必要でした」とある参加者は振り返る。そんな中、最優秀賞を獲得した金融関係の仕事に就く男性はチームの対戦相手と先発投手のデータに的を絞った。
「余分なデータを入れても精度が落ちると思いましたし、絞って選びました。今回は野球のデータを扱える良い機会だと思い応募しましたね。当初はコンサルティング部門で考えていましたが、1日目の夕方ぐらいに『アウトプットができないな』と判断してエンジニアリング部門に切り替えました」
今イベントでは運営の中心となって指揮したPLMの園部健二氏は「スポーツ業界でデータサイエンティストとして活躍することの面白さや可能性を知って頂き、興味を持ってもらえたらうれしいです」と語った。日本プロ野球界はまだまだデータ活用分野にまだまだ余白があり、「データのプロ」になるための門戸は開かれている。その時に「PLMキャリア」を通して球団スタッフにチャレンジすることももちろん可能だ。近い将来、このイベントから球団スタッフが生まれデータ分野で活躍していけば、今までとは違った新しいプロ野球の面白さや深さが見えてくる。
(「パ・リーグ インサイト」武山智史)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)