ソフトバンク甲斐が因縁の地で手にしたMVP 勝敗を分けた指揮官の積極采配

短期決戦での勝敗を分けた指揮官の積極的な采配

 工藤公康監督は「パーソル CS パ」から通じて、この短期決戦では先手の采配を振るい、時には私情を投げ捨ててきた。松田宣浩内野手をスタメンから外し、内川聖一内野手にはバントを命じた。

「選手たちには苦しい思いをさせた。だけど、勝ちたいという思いは伝えてきた」

 ナインはそれを理解した。松田はベンチで常に声を張り上げ、内川は試合後に「バントやっただけなのに(報道陣に)囲まれるなんて照れるね」と笑っていた。先発投手を早い回で交代させた。第5戦ではリードした展開ながらエース格の千賀滉大投手を4回2/3でマウンドから降ろした。

 それができたのも充実した第2先発を整備したからだ。武田翔太投手、石川柊太投手、大竹耕太郎投手といった、レギュラーシーズンでは先発ローテーションを担った投手たちをブルペンに控えさせた。

「ピッチャーは第2先発を作った方がいいと、コーチたちと毎日ミーティングを重ねて話し合いました。日本一という結果につながったことがうれしいです」

 平成の初めの頃、プロ野球は先発完投型が主流だった。1990年代終わりに「勝利の方程式」が定着し始め、今ではいかに優秀なブルペン陣を整備できるかが王者への近道となった。ロングリリーバーという存在。工藤監督は「短期決戦だったからできたこと」と話していたが、野球は常に進化をしていく。平成最後の日本シリーズは新時代のプロ野球へ、何かヒントを与える戦いになったのかもしれない。

(「パ・リーグ インサイト」田尻耕太郎)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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