後半戦で投打かみ合い驚異の追い上げ…データで今季を振り返る【ホークス編】
先発陣の落ち込み顕著、ドラフトでは即戦力投手を指名&FA西の獲得目指す
次に、ソフトバンクの各ポジションの得点力が両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示してみました。そして、その弱点をドラフトでどのように補ってみたのかを検証してみます。
グラフは、野手はポジションごとのwRAA(平均的な打者が同じ打席数立った場合に比べて増やした得点を示す指標)、投手はRSAA(特定の投手が登板時に平均的な投手に比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標)を表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。
センター柳田の攻撃力が抜きん出ていますが、他のポジションは平均をやや上回るかという程度。一塁手と二塁手の攻撃力が平均を下回っています。盗塁阻止率では甲斐が.447、高谷裕亮が.385と12球団の1位、2位を占める有能な捕手陣ではあるのですが、攻撃力となると平均を下回っているというのが現状です。
さらには、投手陣のRSAAは平均以下。特に先発投手陣の落ち込みが顕著です。それもそのはず、まず今季ホークスで規定投球回数に達した投手はいません。先発投手の平均投球回数はリーグ最少の5.787です。
〇先発投手の平均投球回数
西武 6.002
楽天 5.998
日本ハム 5.925
ロッテ 5.848
オリックス 5.790
ソフトバンク 5.787
またヤフオクドームのホームランパークファクターは1.07とほぼ平均であるのですが、被本塁打163はリーグワースト。さらに与四死球602もリーグワースト。FIP(守備の影響とは独立に投手の成績を評価する手法)ベースのRSAAによる評価が下がるのも納得のデータです。
ドラフトではその弱点を補うべく5人の投手を指名しました。そのうち大学生が1名、社会人が3名と来季の即戦力を期待しての指名と言えそうです。1位指名の東都大学リーグ、東洋大学の甲斐野央は最高球速159キロをマークした経験のある速球派。東洋大では守護神として起用されていました。ホークスでも、まずは救援投手としての起用が予想されます。
現在FA宣言しているオリックス西勇輝に対して熱烈にラブコールを送っていますが、この補強が成功すれば、先発投手陣のRSAA値向上に一役買うことになるでしょう。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。