弱点を的確に補う浅村&ドラ1辰己の獲得 データで今季を振り返る【楽天編】

楽天・平石洋介監督【写真:荒川祐史】
楽天・平石洋介監督【写真:荒川祐史】

シーズンを通じて解消しきれなかった失点超過

 とにかく、今季の楽天は昨年までの打線が機能せず、得点力不足に泣かされたシーズンとなりました。楽天のペナントレースでの戦いぶりを、得点と失点の移動平均を使って、チームがどのような時期にどのような波であったかを検証してみます。

 移動平均とは大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標です。グラフでは9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移を折れ線で示し、得点>失点の期間はレッドゾーン,失点>得点の期間はブルーゾーンとして表しています。

9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移
9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移

 開幕から6月上旬にかけて、失点が得点を大きく上回るブルーゾーンの状態が続き、大きな連敗を何度も喫し、他の5チームと大きな差をつけられてしまいました。特に得点力を示すグラフの推移をみると平均4点の水準に至っていません。交流戦に入って失点は減る傾向を示してはいるものの、それに反応するかのように得点がそれを下回るという噛み合わせの悪い状況に陥りました。ついに6月16日、梨田監督の辞任が発表。翌日から平石洋介コーチが監督代行となって再出発すると、それまでブルー1色だったグラフがレッドゾーンに変貌しました。

 それまでの流動オーダーから、1番センターに2年目の田中を抜擢し、茂木、島内、今江、銀次、アマダー、藤田、ペゲーロ、嶋の並びを基本軸に、打線を固定しました。すると交流戦終了前まで打率.232、OPS.616、得点圏打率.217、1試合平均得点3.09だった打線が復調し、7月には打率.264、OPS.766、得点圏打率.308、1試合平均得点5.11と改善しました。

 もともと先発投手陣は則本、岸を軸に好調で、救援投手陣の成績も改善され大きなプラスに転じてシーズン終盤の反撃も期待されていました。

 しかし、8月に入ると状況は一変します。アマダーがドーピング違反のため8月9日から出場停止、茂木がデッドボールの影響で17日に登録抹消、4番を任されていた今江が8月月間打率.200、OPS.552、得点圏打率.160の不振に陥るなど主力打者の離脱、不振が目立ち、得点力も開幕当初に似た元の木阿弥状態に。9月には3番島内が打率.364、OPS.974、得点圏打率.474、4番ウィーラーが打率.341、OPS1.051、得点圏打率.476、5番銀次が打率.305、OPS.739、得点圏打率.458と、中軸が実力を遺憾無く発揮し、得点力を高めましたが、今度は逆にそれに反応するかのように失点が増え、ブルーゾーンが解消されることなくシーズンを終えてしまいました。

 実は、楽天の同一リーグとの対戦成績では、西武、ソフトバンク、日本ハムには負け越しているものの、オリックス、千葉ロッテには勝ち越しているのです。にもかかわらず最下位という成績は、上位3球団に対して大きな負け越しを喫してしまったというところが大きな要因となっているのです。特に西武戦は、6勝19敗、防御率5.90、失点152(1試合平均6.08)と最も苦手としていたのです。

 また、今季の楽天は本拠地で大苦戦しています。楽天生命パークでの成績は20勝49敗で勝率は2割9分。12球団の本拠地勝率ワーストです。
ホーム:打率.230、OPS.630、防御率4.18
ビジター:打率.251、OPS.709、防御率3.35
と投打ともに、ホームで成績を残しておらず、ホームアドバンテージを活かせていない様子が伺えます。

 来季に向けての好材料としては、後半戦から1番センターに定着した田中が18本塁打、本塁打率23.5とチームの日本人野手として最高値を示し、強打の1番としての役割を担ったことが挙げられます。また盗塁も21、成功率87.5%と高い水準の脚力でチームに貢献しています。また8月下旬からスタメンに名を連ね出した内田は、打率こそ低いものの177打数で12本塁打、本塁打率14.75はリーグ7位と長距離砲としての片鱗をみせました。

セカンドの攻撃力が大幅マイナス、外野手も深刻なマイナス

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