PBSで語られた米MLSのチケット販売術、岡田武史氏が注力するビジネスとは…

米MLSのチケット販売訓練では一発芸のトレーニングも…

 育成プログラムには一発芸などのコメディトレーニングも組み込まれている。それは販売員の判断力を鍛えるためだ。電話でのチケット販売成約率が約3%の状況で、ポジティブに提案ができる対応力も求められる。NSCを視察したことのある中村氏は「いかにユーモアを持って励まし合いながら取り組めるかにも行き届いている」と評す。

 優秀な成績を残す販売員の特徴として「勤勉さ」と「誠実さ」が共通していることが多い。まれに「才能」で結果を残す人材もいるが、ヤコブソン氏が見た、最も営業成績を伸ばしたスタッフは、誰よりも多く電話をかけて、解析の成績も優れ、最も多くの時間をかけて業務に取り組んでいたという。話をする際には「自分」を取り除き、「相手に話をしてもらうのがうまくなれば、優秀なセールスマンに近付ける」とヤコブソン氏は参加者へアドバイスを送った。

 続いて中村氏、岡田氏、PLM代表取締役の根岸友喜氏が登壇して「プロスポーツにおけるセールスの重要性」をテーマに、パネルディスカッションを行った。岡田氏が代表を務めるFC今治は今季のJ3昇格を惜しくも逃したが、チームは着実に成長し、強くなるにつれてスポンサーの数も増えた。「昇格できるように頑張って」と声をかけていたサポーターが「今度こそ上がるぞ」と我が事として語るようになった姿に、岡田氏は手応えを感じている。

 岡田氏には、今も忘れられない光景がある。現職に就いた2014年、愛媛県今治市で昼下がりにもかかわらず、人もまばらな商店街を目の当たりにした。人口16万人ほどの街では、サッカーの結果だけでスタジアムを満員にできないと悟り、「面白くて強いサッカーをすれば文句は言われない」という指導者としての考えが「お客様に喜んでもらわなければ駄目」と経営者の視点に切り替わった。現在はクラブの勝敗以上に、サッカーを通じた世の中への貢献に尽力している。

 まずは、クラブとしても個人としても、街とのつながりが深まる方法を模索した。選手、監督時代に培った人脈を生かすだけではない。地元の小中学生を教える指導者と会い、育成コーチとジュニア選手でお年寄りの家を訪ねて困りごとを解決する「孫の手活動」を続け、チームスタッフにも地元の友達を増やす目標を設定した。今でも、今治市を一枚岩にするために足を動かしている。

 そして、岡田氏が注力するのはスタジアムビジネスだ。サッカーの試合を観てもらうだけではなく、試合に負けて悔しい思いをしている人や、サッカーを知らない人が来ても「半日過ごせる場」として楽しめる空間作りを目標にしている。具体的には、本拠地である「ありがとうサービス. 夢スタジアム」に子供が遊べる場所を作り、フードコートやゲームセンターのほか、駐車場にはステージを設置した。

 近年のプロ野球界を鑑みても、球場のエンターテインメント化は目覚ましい。根岸氏も「プロ野球の球場にはボールパーク化構想があり、海外と比較しても日本の方が進んでいると感じる部分もある。もちろん環境が違うので、それぞれの良さがあるということだと認識しています」と現状について考えを明かした。

岡田武史氏は「夢スタジアム構想」を掲げて活動している

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