平日は練習2時間弱、野球普及に取り組む金津…21世紀枠候補校、推薦理由は?

高野連が来春選抜の21世紀枠候補9校を発表
高野連が来春選抜の21世紀枠候補9校を発表

所在地の福井県あらわ市はピーク時から人口約4000人減少

 日本高野連は14日、来春の第91回選抜高等学校野球大会の21世紀枠の候補校9校を発表した。21世紀枠は練習環境、地域貢献などが選考条件となり、各9地区から推薦される。そこで、ここでは推薦された9校の推薦理由などを紹介。今回は北信越地区の金津高校だ。(主催者発表文より一部抜粋)

 所在地の福井県あわら市は、石川県境に接する福井県最北端に位置し、ピーク時には約3万2000人だった人口が現在は約2万8000人に減少。市内に10校あった小学校も、ここ3年で3校が休校になった、急速に過疎化が進んでいる地域である。その、あわら市唯一の高校として、市内2つの中学校との連携型中高一貫校に指定され、授業や部活動で相互交流を行っている。毎年80名程度の国公立大学進学者を輩出している進学校のため、平日は7限授業後に2時間の練習時間を確保するのが厳しく、休日も土曜補習や模擬試験などと両立しながら部活動に取り組んでいる。

 野球部員は1、2年生合わせて22名とマネージャー4名。あわら市と、隣接する坂井市出身者のみで活動しており、毎年新入部員は少なく、慢性的に部員不足に悩まされている。学校のグラウンドはサッカー部、陸上部と共用。降雪時や雨天時には廊下や自転車小屋などの限られたスペースで工夫しながら練習を行っている。特に記録的豪雪だった昨冬は校舎や周辺が雪に埋もれ、練習場所確保に苦労した。

 野球部はこうした厳しい環境の中、「自ら考えて行動する」という理念のもと「練習の質」にこだわって活動している。校内で導入したeポートフォリオを用い、部員と指導者間での課題の確認や部員同士での課題の共有などリアルタイムに行い、振り返りを通して自己の内面化を図ることに力を入れている。また、年間手帳の記入を通して日常の時間の使い方を意識することで、刻々と変化する試合状況を瞬時にとらえ最適な行動を取る力の育成に努めている。

 ボランティア活動にも意欲的に取り組み、校門前の歩道や駐車場の除雪、さらに夏の地方大会中に行われる県下最大級の「金津祭」の清掃活動にも参加している。今年行われた福井国体でも、運営・応援ボランティアとして積極的にリーダー的な役割を果たした。

 さらに「金津野球キャラバン」と銘打ち、市内少年野球チームとの野球交流会や中学生との合同練習会への協力、保育園児対象のティーボール講習会の開催などにも取り組み、部員不足解消や野球人口の底辺拡大に努めている。こうした取り組みが地域に評価され、卒業生、保護者、地域指導者による練習サポート、近隣住民による怪我防止のためのヨガ体幹トレーニング指導など、野球部を支援するボランティアの輪が大きな広がりとなってきている。今秋はノーシードから2年連続で決勝に進出。北信越大会に出場した。

 推薦校の選定では新潟南と金津の2校に絞られ、最終的に、地域との相互間での繋がりの強さや、野球人口の拡大に向け、保育園児や小学生への普及活動を行ってる点、勝利至上主義に陥らず「高校の部活動」の延長の中でシード校を破り福井大会決勝戦に進んだことなどが評価された。なお、同校は昨年に続いて2年連続で北信越地区から推薦された。

(松倉雄太 / Yuta Matsukura)

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